資本主義以後の世界 日本は「文明の転換」を主導できるか 中谷巌著 ~危機の原因はフロンティアの消滅

資本主義以後の世界 日本は「文明の転換」を主導できるか 中谷巌著 ~危機の原因はフロンティアの消滅

評者 中岡 望 東洋英和女学院大学教授

資本主義の危機が叫ばれている。サブプライムローン問題に端を発する金融不安と世界不況、欧州諸国の財政危機など資本主義制度の信頼を失わせるような事態が続く。そうした状況を背景に「資本主義の崩壊論」や「ポスト資本主義論」と題する本が相次いで出版されている。

資本主義はつねに批判の対象になってきた。また何度も危機にさらされてきた。資本主義擁護派の経済学者アラン・メルツァーが言うように「資本主義は完全ではない」が、変化を遂げながら生き残ってきた。

見えざる手に導かれる市場主義の限界を克服するために政府による市場規制と所得再配分を行う修正資本主義が導入され、戦後の世界的な成長を支えた。だが、修正資本主義も政府の肥大化という限界に直面し、新自由主義が台頭、再び市場主義が復活する。そして現在、新自由主義も大きく蹉跌している。本書は新自由主義と決別した著者の「資本主義論」である。

著者は「グローバルな資本主義の危機を克服するには、究極的には、『文明の転換』が不可欠である」と主張する。本書の議論の特徴は、資本主義世界の行き詰まりの原因は「フロンティアの消滅」にあると論述する点にある。戦後の成長は旧植民地という「地理的フロンティア」の存在によって可能となり、米国の発展は「金融フロンティア」を切り開くことで可能であったと指摘する。しかし、リーマンショック後に、そのフロンティアが消滅し、次のフロンティアが見えてこないことが、現在の資本主義の長期的な危機の原因となったと分析する。

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