千葉県の公立小中学校で「塾講師が子どもを指導」、教育現場に起きた変化は? 教員と塾講師、それぞれの指導で生まれる効果

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一方で、24年度の学習支援には課題もあった。教員・塾講師ともに、塾講師がTTで入る学校の授業を行った経験がない。そのため、初めのうちは教員の発話量が多く、指導力の高い塾講師がその力を発揮する機会が乏しかった。

「千葉県では地域人材の活用を進めています。例えば、大学生や元教員、主婦といった方々が週1回、学習サポーターとして授業補助に入り、つまずいている子をサポートしています。そのような中、24年度は本事業の課題として指導力のある塾講師の役割が学習サポーターと同じような授業補助にとどまっており、その高い指導力を発揮してもらえる場面の創出が改善点として挙がりました」(吉村氏)

その改善策は2つある。1つは、塾講師が入る週2日の授業は、教員の発話量を減らし、個別最適な学びの時間として、子どもたちのサポートにつく時間を増やすことである。

もう1つは、授業時間内に塾講師が教えられるようにしたことである。例えば、クラスを少人数に分けて教員と塾講師がそれぞれ教えることもできる。ただし、塾講師は教員免許を持っていないため、指導計画や評価は教員が行うこととしている。

市町村でも、塾講師の有効活用を目指す

本事業の課題のもう1つは、教員と塾講師の打ち合わせの時間の確保である。教員は1時間目からずっと授業をしており、塾講師の勤務時間は6時間と決められている。打ち合わせできる時間が限られており、指導法や使用する教材など、授業の進め方についてどのように共通理解を図るかが課題である。

そこで、授業時間に職員室にいる教員にプリントを預ける、メールで連絡をするなど、教員に負担がかからない形で改善を進めている。今年はTTとしてだけでなく塾講師が単独で授業を行うケースも想定されるため、さらなる改善が必要になると見られる。

最後に吉村氏はこう語った。

「2年目の今年も、公立小・中各5校ずつ、計10校で学習支援を行っています。本事業はモデル事業であり、ゆくゆくは各市町村で予算化し、塾講師の活用を実施してもらいたいと考えています。そのために、塾講師の活用によってどのような効果と課題があるのか、市町村への情報提供をしていく予定です」

仕事が山積する状態でも、走り続けざるをえない学校教員。その指導力向上と働き方改革を両立する秘策として、この取り組みはさらなる効果を発揮するのか。今後も注目を集めそうだ。

(文:吉田渓、企画・編集:楡木佑奈、注記のない写真:千葉県教育庁提供)

東洋経済education × ICT編集部

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小学校・中学校・高校・大学等の学校教育に関するニュースや課題のほか連載などを通じて教育現場の今をわかりやすくお伝えします。

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