千葉県の公立小中学校で「塾講師が子どもを指導」、教育現場に起きた変化は? 教員と塾講師、それぞれの指導で生まれる効果

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つまり、学習指導要領が重視している「主体的・対話的で深い学び」においては、教員の指導法に効果が見られたということだ。千葉県では「『思考し表現する力』を高める実践モデルプログラム」を推奨しており、教員はこれを活用して授業を行っている。

一方、塾講師は「こうやって解くんだよ」と生徒に解き方を先に教えて演習問題を繰り返す、定着を重視した授業を行っていた。

塾講師の補習で、「算数が好きになった」の声も

これらの検証結果を受け、千葉県教育委員会は2024年度から「塾講師を活用した学習支援モデル事業」を開始した。塾講師を補習などで活用し、生徒の学力向上効果を狙うというものだ。このモデル事業では学びにつまずいている生徒に対する補習を塾講師が週2日、放課後に受け持つ。

加えて、3時間目から6時間目に行われる教員の授業に塾講師がTT(ティーム・ティーチング)として補助に加わる。TTとして授業に入ることで、生徒がどの部分でつまずいているのか、教員がその単元でどのような説明をしているかを把握し、補習に生かすのだ。

対象となる学年と教科も、小学6年生の算数、中学3年生の英語と数学となった。算数・数学と英語はいずれも学年が上がるにつれて得意・不得意の二極化が進む教科だ。中学に上がる前に小学6年生の算数を補完し、高校受験を見据えて中学3年生の英語と数学を補習するという形だ。このモデル事業を行うことで、子どもや大人はどう変化したのだろうか。吉村氏はこう話す。

塾講師による授業の様子

「補習は各学校の実態に応じて、希望する生徒が参加できるようにしました。生徒へのアンケート調査では、『わからないところがわかるようになった』『内容がわかるようになって、算数が好きになった』という声も聞かれ、意欲の向上が見られました。

また、放課後の補習に参加した回数が多いほど学力向上の傾向が見られました。24年度は塾講師の派遣が始まる前の5月に、対象校に全国模試を受けてもらいました。その後、12月に同様の試験を受けてもらったところ、小・中学ともに学力の伸びが確認されました」

塾講師の活躍が、教員の働き方改革に

2024年度からの事業で塾講師が学校現場に加わったことは、教員にもさまざまな変化とメリットをもたらしたと各学校が実感しているようだ。

「『授業でつまずいたところを補習で取り上げるため、次の授業を進めやすくなった』という声が上がっています。また、塾講師の派遣については、指導経験が豊富な講師を指定しているため、新任の教員等は指導法を参考にすることができています。

さらに、放課後や夏休みに教員が行っていた補習を塾講師に任せることで、その時間を教材研究等に充てることもできるようになり、教員の働き方改革にもつながっています」(吉村氏)

塾講師側にも、新たな気づきがあった。教員は子どもに課題意識を持たせ、主体的な学びを引き出す授業を行う。また、学校の授業では子ども同士が教え合う場面もある。塾にはない教え方や学び方に触れることは、塾講師の学びにもつながったようだ。

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