恩返し 桂歌丸著

恩返し 桂歌丸著

落語名人の話が面白くないはずがない。師匠の語りを起こし編集したのがベテラン芸能記者とくれば鬼に金棒で、構成も臨場感も目次からして楽しめそうな予感がある。幕開け「桂歌丸噺家生活60周年記念口上」でまず笑いを取り、その後は生い立ちから不屈の「二ツ目」道、不動の真打道、無欲の(落協)会長道と快調だ。合間には無敵の「笑点」道が挟まるが、放送開始から45年を超えたこのお化け番組が落語道と縦糸横糸の関係で話がつづられる。

半分は自伝で半分は落語界の内幕。どちらも勝手放題のようでいて、人間味豊かな逸話に事欠かず、落語道の厳しさも知れる。落語界の大先輩や現役の大物が次々と登場して何ともいえない素顔を見せてくれるのも楽しい。ばかばかしい言動の裏で、古典に新作に超のつく執念の努力を重ねての高座があることを知れば、寄席の楽しみもおのずと増してこよう。十八番の口演速記「紺屋高尾」で締めるのもしゃれている。(純)

中央公論新社 1575円

  

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