元キャリア官僚「結局、文科省が悪い」論に本音、降り注ぐ教育改革への向き合い方 学校がもっと「しなやかでしたたか」になるべき訳

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ただ、1つ加えるならば、指導事項の精選と、標準授業時数の削減に、何とか切り込んでいってほしい。それは単に、「現場が楽をするため」という発想ではありません。先ほど紹介した「『5つのリソース』の欠如」の図に戻ってください。

この改善の突破口となるのは、真ん中の「成長の機会」です。「一点突破すべき」と申し上げた「主体的・対話的で深い学び」を実現するのは、決して簡単なことではありません。現在検討されているような、標準授業時数や単位授業時間の柔軟化は、それはそれで進めてほしい。しかしそれだけでは不十分だと思うのです。

中央教育審議会の特別部会の委員でもある溝上慎一先生(桐蔭学園理事長)は、「改革を実現するために必要な教材研究や研修の時間を、学習指導要領の枠組みの中で明示的に保障すべき」と主張されています(YouTube「溝上慎一の教育論 動画チャンネル」)。

例えば、大学の1単位は、45時間の学修時間を想定していますが、これは、実際の授業30時間と、授業外の学修(自習)時間15時間の合計です。これと類似の考え方で、授業を行うために必要な準備(教材研究や研修)の時間を明記する。ただ、現在の標準授業時数にこうした時間を加えるのでは、より現場の負担が増し、現実的ではありません。

よって、現在の標準授業時数を上限として、その範囲内で、授業時数(指導事項)と教材研究・研修の時間の配分を検討する。そうすれば、教師に「成長の機会」が保障され、そしてその結果として、より質の高い「主体的・対話的で深い学び」の実現につながると思うのです。現場からの声として、文科省には受け止めてほしいです。

そうそう、最後にもう1つ大切なことを。冒頭、「御上先生」の古代理事長の台詞を引用しましたが、教育行政は、文科省だけではありません。

今、僕が籍を置く教育委員会も教育行政。むしろ、カギを握るのはここです。「結局のところさぁ、文部科学省が悪いんだよ」に単に頷くのではなく、「変化(成長)のためのリソース」を1つでも多く教師に届け、「しなやかで、したたかな学校現場」にしていくために、教育委員会の腕が問われています。教育委員会のみなさん、頑張りましょう。僕も、頑張ります。

(注記のない写真:takeuchi masato / PIXTA)

執筆:広島県総務局付課長、福山市教育委員会学校教育部参与 寺田拓真
東洋経済education × ICT編集部

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小学校・中学校・高校・大学等の学校教育に関するニュースや課題のほか連載などを通じて教育現場の今をわかりやすくお伝えします。

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