一般的に、レーニンはマルクス主義者と考えられている。しかし実証的に見てみると、マルクスやエンゲルスの言説を素直に継承したのはドイツ社会民主党の指導者カール・カウツキー(1854~1938年)だった。
晩年のエンゲルスは1894年から95年にかけて「原始キリスト教の歴史」という論考を雑誌『ノイエ・ツァイト(新時代)』に連載し、原始キリスト教について好意的に論じていた。カウツキーはエンゲルスの言説を継承して『キリスト教の起源』(08年)を書いた。レーニンは、カウツキーがキリスト教に宥和(ゆうわ)的姿勢を取るのは「階級闘争を正確に理解していないから」だと激しく批判した。
カウツキーやクーノウのような権威ある西欧のマルクス主義者も革命的階級闘争を理解しない啓蒙家だとして説明されている。カウツキーやクーノウは実証主義者であって弁証法的唯物論者でない、つまりかれらはブルジョア急進主義に毒されているというのだ。
カウツキーの著書『キリスト教の起源』はかつてはマルクス主義者内部で非常に影響力があって、ソヴェト・ロシアでも初めのころは反宗教プロパガンダに利用された。同じことはクーノウの『神の信仰の起源』についても言える。けれどもソヴェト哲学と反宗教プロパガンダについての基本方針が布告されて以来、カウツキーやクーノウの著書は排斥され、正統マルクス=レーニン主義にはふさわしくないと認められた。
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