波乱を呼んだ共通テストへの「情報」追加、公平性や必要性は?識者が論じる賛否 変わる大学入試、新教科追加の意義を問い直す

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――すると、共通テストへの追加が決まってから、現場の雰囲気も変わったのでしょうか。

大きく変わりました。「きちんとやらなければまずい」という機運は着実に高まっています。一方で、共通テストはマークシート方式なので、知識偏重になるのではないかという懸念も少なからずあったと思います。実は、私もはじめは共通テストへの導入に懐疑的でした。

主体性をもって探究的かつ実践的に学ぶ情報教育の本質と、マークシート方式の試験との親和性は低いのではないかと思っていたんです。ただ、サンプル問題や試作問題を見て考えが変わりました。詰め込んだ知識だけで答えられる問題はなく、与えられた資料で何を実現すべきか、読み解いて考えないと答えられない問題で、かなり工夫されていると感じたんです。この印象は、実際に共通テストで出題された問題を見ても変わっていません。知識のみで答えられる設問が3つほどありましたが、全体的には思考力を問う試作問題と同様の傾向でした。

「言語能力」「問題発見・解決能力」「情報活用能力」は、学習の基盤としての資質・能力とされています。どの教科でもこれらの力が必要ですが、情報はとりわけさまざまな学問に関連する科目ですので、広く社会と関連した実践的な学びができます。実際の問題も、社会と関連したテーマになっていましたし、普段使っている技術やサービスが、情報と深く関わっていることを感じられる良問だったと思います。

[両者の意見をふまえて]受験生が被る「痛み」はできるだけ少なく

情報教育の必要性と、共通テストで「情報Ⅰ」を課すべきかどうかは、分けて考えなければならない。前者は、取材した両者ともに認めるものだった。後者について、大内教授の「教育体制が整っていない今は拙速/受験生に不公平を強いるのは違う」という主張は簡単に否定できるものではない。一方で長く教鞭を取ってきた永野氏の「試験に課されない科目はおざなりになってしまう」という指摘もうなずける。

すでに「情報Ⅰ」が共通テストに課されている以上、一刻も早く教育体制を整え、地域間や学校間で差が生まれないことが急務だろう。変化に伴う「痛み」が生じるのはどうしようもないが、それを被るのは受験する生徒だ。

大内教授の「社会側からの要求をそのまま共通テストに反映しなければならない、とは思わない」という意見は鋭い。情報教育が重要なのであれば、教育現場への「劇薬」のごとく共通テストに科目を追加する以外の方法――例えば、みんなのコードが提言するように、小中高を通じて体系的なカリキュラムを整備するなど――も考えられたはずだ。

とはいえ、「社会が求めるから」とあれもこれもと課程に詰め込むばかりでは教員も生徒も持たない。何か増やすのなら、何かを減らすという取捨選択の発想も必要なのではないだろうか。

(文:高橋秀和、企画・編集:晏 暁丹、注記のない写真:ダイ / PIXTA)

東洋経済education × ICT編集部

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小学校・中学校・高校・大学等の学校教育に関するニュースや課題のほか連載などを通じて教育現場の今をわかりやすくお伝えします。

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