波乱を呼んだ共通テストへの「情報」追加、公平性や必要性は?識者が論じる賛否 変わる大学入試、新教科追加の意義を問い直す

ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小
永野直(ながの・なおし)
NPO法人みんなのコード 未来の学び探究部 講師・研究開発担当
元千葉県公立高等学校情報科教員。2003年に高等学校教科「情報」が新設されてから、約20年間にわたり情報科の授業を担当。2011年には千葉県立袖ヶ浦高等学校に「情報コミュニケーション科」を新設し、公立高等学校として国内で初めて生徒1人1台の自己所有タブレット環境を実現。千葉県総合教育センター研究指導主事を経て、2021年より現職。宮城教育大学非常勤講師も務める
(写真:本人提供)

また、今は小学校でもプログラミング教育が実施されていますが、1つの科目としてあるのではなく、各教科で分散して扱うことになっています。しかし学校によってばらつきも大きく、小中高を通じて体系的・継続的に情報について学ぶ体制が必要だというのは、私たちみんなのコードでも提言しているところです。

そうやって情報教育を充実させることを考えると、現時点でも教員が足りていないという問題に突き当たります。しかし「情報教育の重要性」と「必要な体制の整備」は「鶏が先か、卵が先か」で、できないからまだやらなくていいというわけにもいかないと思うのです。

「拙速」という意見も理解できますが、社会の変化は待ってくれません。例えば生成AIが急速に普及して、すでに働き方や学び方が大きく変わってきているわけで、情報教育を充実させる取り組みは今でも遅いくらいです。

――ある種の痛みを覚悟する必要があるということでしょうか。

何でもそういう面はあると思います。高校で「情報」科目ができたときも教員の不足どころか全国に1人も情報の教員はいなかったわけで、非常に大変でしたし、ICT活用やGIGAスクール構想もそうでした。「変えなくてもいいじゃないか」という感覚もあると思いますが、社会が変わる中で、学ぶ内容や学び方が何十年も変わらないほうが不自然です。教育は、理想をかざしてそこにどれだけ近づいていくかが重要だと思います。

入試に影響しない科目は軽視されてしまう?

――情報教育の充実という点で気になるのは、「情報」は2003年に必履修科目になって20年以上が経つということです。教育体制が整っていないとすれば、共通テストの科目ではなかったことで、軽んじられている部分はあったのではという想像もしてしまいます。

正直、その傾向はありました。大学入試に直接関係がないという理由で、専任の情報教員を採用していない高校もありましたし、「◯◯先生はパソコン得意だから、情報の授業もやってください」とか「非常勤の先生に適当にやってもらえばいい」といった風潮もなかったとはいえません。なんとかごまかしてやっていても、入試に影響しないからいいという話です。

卒業に必要な必履修科目を履修させていない未履修の問題が起きたのも、そういう風潮が背景にあったからです。共通テストに追加されたことで、それではダメなんだという認識が現場に広がったことは事実としてあったと思います。

次ページはこちら
関連記事
トピックボードAD
キャリア・教育の人気記事