2025年、「円高」は続かず「円安」が再びやってくる アメリカ「利下げの終わり」と日銀「利上げの終わり」
また、地政学リスクの台頭により緩和的な金融環境を正当化するという展開もあり得るが、その際は資源価格も騰勢を強め、むしろ引き締め的な金融環境が求められている可能性もある。予想される影響は一様ではない。
なお、2024年8月初頭に公表されたアメリカの7月雇用統計のように、米経済指標が大きく悪化することで利下げ期待がにわかに高まるという展開もあり得る。
しかし、何のショックもないのに景気に断層が生まれることは元来考えにくい。事実、8月の際は翌月以降の米経済指標は改善傾向がクローズアップされ、これを受けて米金利とドルは相互連関的な上昇に至っている。
類似の展開は2025年もありそうだが、単月の経済指標の結果を針小棒大に捉え、それで利下げが加速するかのような期待は抱くべきではない。
日本の金利が急騰するリスクシナリオ
かたや、円金利が想定以上に上昇することはないのか。具体的には日銀の利上げが1%にとどまらず1.5%や2%へ急騰する展開はあり得るのだろうか。
もちろん、日本経済の自然利子率が思ったよりも高いとすれば、たとえば0.5%程度なのであれば2.5%程度の中立金利も正当化される。
しかし、そこまでの利上げが行われる場合、「思ったよりも日本経済が強く、自然利子率が高い」という前向きな状況ではなく、より追い込まれた状況になるはずである。
2025年の日銀利上げが1%以上で持続していた場合、それは今よりもさらに通貨防衛色の濃い政策運営に移行した場合であり、その際は1ドル=160円台に定着し、170円や180円を予想する声が出ているはずだ。一応検討に値するリスクシナリオである。
2024年3月のマイナス金利解除は賃上げ機運に背中を押されたものだが、7月の追加利上げは円安によるインフレリスクの高まりを理由としていた。その経験もあって、夏以降の金融市場では「円安になれば利上げ織り込みが進み、それが落ち着けば現状維持への思惑が強まる」といった側面が大きくなっていた。
日銀の政策反応関数において為替の占める比重は増しており、前述の植田総裁インタビューでも「インフレ率が2%を超え始めているときに一段の円安になれば、それは中央銀行にとってはリスクが大きい動きとして、場合によっては対応しないといけなくなる」と述べている。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら