技術革新は労働市場に激変をもたらす。日本のビジネスパーソンも、その影響を免れない。

冨山和彦(とやま・かずひこ)/IGPIグループ 会長。1960年生まれ。経営コンサルタント。東京大学卒業。在学中に司法試験合格。スタンフォード大学でMBA取得。産業再生機構COOを経て、2007年経営共創基盤(IGPI)を設立
小島武仁(こじま・ふひと)/東京大学大学院経済学研究科 教授、東京大学マーケットデザインセンター(UTMD) センター長。経済学者。2003年東京大学卒業。ハーバード大学でPh.D.(経済学専攻)取得。スタンフォード大学教授などを経て2020年9月から現職。研究分野はマーケットデザインなど
(撮影:今井康一)
分断・多極化する世界で、新しい視界を開くことができるか。日本が向かうべき道とは──。本特集では、株式・マネーから日本の政治経済、世界情勢、産業・企業動向、そしてスポーツ・エンタメまで。2025年の注目テーマを徹底解説する。
イノベーションは人の仕事を奪うか、助けるか。デジタル化や生成AI(人工知能)の恩恵を受けるのは誰か。IGPIグループ会長・冨山和彦氏と、マーケットデザインを専門とする東京大学教授・小島武仁氏が語り尽くす。
ばら色のうそ
──技術革新は、労働者にその技術への適応を求めます。
小島 昔、経済学者が想定していたばら色の世界では、「創造的破壊」が起き産業構造が変わったときには、旧来の業種で余った労働者は新しい業種にシフトしていくとされていた。
だが、現実の社会や制度は過去のあり方に「経路依存的」に縛られ、ガチガチに固まっている。想定どおりのシフトは起こらず、アメリカでは中間層の没落という大問題に発展した。
冨山 労働者の業種間シフトの仮説には、ばら色のうそがあったと思う。この30年で起こったのは、デジタル革命と製造業のグローバル化だが、IT、デジタル産業は大量の雇用を生まない。一部の数学ができる人、センスのいい人による勝者総取り(ウィナー・テイクス・オール)になる。
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