生駒市が独自の人材バンクで「講師不足」解消、従来の登録制度と何が違う? ターゲットを明確にした「広報戦略」も奏功

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「来年度の4月から働きたい、または、数年後に働きたい、という方の登録もあります。生駒市に住みながら大阪府で教員をしている人も多いので、定年後は市内近所の学校で働きたいという将来を見据えたニーズも一定数あるのではないかと思います」と杉山氏は言う。

2024年度は計26名の欠員をすべて補充できた。内訳は、バンク経由が15名、県教委の紹介が2名、学校管理職の人脈経由が9名と、バンク経由が半数以上を占めている。また、幼保の登録者も全体の2~3割ほどおり、今年度のバンク経由の配置実績は幼稚園教諭2名、保育士2名、計4名となった。

学校現場と登録者のマッチングは「テトリス」

市内小学校の校長を務める奥田隆史氏は、バンクを活用した校長の1人。1学期の間に産休や一身上の退職、病休などによって5名の欠員が生じ、教頭が担任代行する事態に陥った。

そこで、補充のためにあらゆる伝手を頼ったが、「ほかの学校も同じような状況にある」と言われてしまうことも多く、1学期の間は結局講師が見つからなかったという。「それがバンクによって解消でき、大変ありがたく思っています」と奥田氏は振り返る。

奥田隆史(おくだ・たかし)
生駒市立小学校校長
(写真:本人提供)

欠員を補充する前と後では職員室の雰囲気や子どもたちが「こんなに変わるのかというくらい変わった」(奥田氏)そうだ。

「1学期で欠員5名という状況は、教員たちにとっては大きな不安材料になります。5人分の業務が振り分けられ、業務負担が増えてしまうからです。7月には職員室から笑い声も聞こえなくなりました。私もどんなに講師を探しても見つからず、日々不安と焦りの中にいました。子どもたちも不安があったのでしょう。新しい先生が決まって学級が再スタートすると、子どもたちは見違えるように活気を取り戻しました。保護者も安心し、学校への信頼を取り戻すことができたのではと思います」(奥田氏)

最終的に5人の欠員を、3人の常勤と4人の非常勤で埋めることができたが、そのうち6人がバンク経由で補充できた。ただ、マッチングは市教委と学校長の手腕が問われるようだ。

「校内の空き担当や時間割などを踏まえ、登録者の就労可能条件と照らし合わせ調整を図るので、パズルというよりつねに動く『テトリス』をやっているイメージ。そのためマッチングはタイミングが重要になりますが、うまくいったのは市教委の調整のおかげです。リアルタイムで私たちのニーズを聞いて即マッチングしてくださるので非常に助かっています」(奥田氏)

市内19校のニーズと登録者のマッチングをリアルタイムで行う「テトリス」をこなす杉山氏は、こう語る。

「現状私ともう1人の職員でマッチングをしていますが、正直マンパワーが必要な業務。一方、奈良県では2023年10月から、『常勤の欠員は常勤で埋める』から『常勤が見つからない場合は1人の業務を複数の非常勤で埋めてもいい』というルールに変わりました。今年度は市内の半数の学校で欠員が生じましたが、バンクをうまく活用できたのはこの制度変更によるところも大きいです」(杉山氏)

キャリアのある講師が多彩に活躍

50代前半のAさんは、他府県で正規教員として20年以上のキャリアを積んだ後、アメリカの大学で日本語アシスタントとして1年ほど勤務して帰国。改めて「これまでやってきた仕事で役に立ちたい」と考え、2年続けて奈良県の教員採用試験に応募したが、希望は叶わなかった。

「年齢的に難しいと感じた」というAさんは、たまたま知ったバンクに登録。市教委から連絡を受け、今年9月から常勤講師として市内小学校に勤務している。

「まずは特別支援学級のお手伝いから始め、現在は病休されている教員の方に代わり、学級担任を務めています。1人1台のデバイスが入るなど学校を取り巻く環境も変化しており、情報量の多さに対応するのに毎日慌ただしく過ごしていますが、学校は日々変化があって子どもたちの成長に伴走していくのは楽しく、毎日充実した時間を過ごしています」と、Aさんは話す。

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