同じく優秀賞のソフトバンクは自ら手を挙げた人にチャンスが広がる「手挙げ式文化」にこだわり、社員が自己のキャリア目標に合わせて主体的に選択できる学習環境を整備している。
同時に研修受講や他部署への異動、新規事業提案など多様な機会を提供する。社員の挑戦を奨励し、イノベーションを生み出す文化を醸成している。
こうした点が、全社員がデジタルリテラシーを身につける環境・成長機会を提供し、生成AIの活用による生産性向上に取り組んでいると、受賞理由として評価された。
同様に優秀賞を受賞した日本特殊陶業は社員全員のDXリテラシーの底上げを目指した研修プログラムを整備し、デジタル人材の育成に注力している。このDXリテラシー教育は、受講率99%という高い数字で、この点が大きく評価された。
さらに、目指すべき人材像を「自律創造人財」と定め、従業員のスキルを可視化し、自律的に学ぶ機会の提供を行っている。
リスキリングの本気度が試される
7月31日に行われた同アワードの表彰式・記念シンポジウムで記念講演したBNPパリバ証券グローバルマーケット統括本部副会長の中空麻奈氏は、「資源の乏しい日本では人的資本は最後に残された資源。これを徹底的に活用するために、年齢にかかわらず能力主義を徹底することで競争力を増すことが大切」と話す。
その前提になるのが「若年層からシニアまでリスキリングで何回でも活躍できるようにすること」だという。
将来、若い人口が大きく減る日本での人材確保を考えると、能力主義の徹底は方向性としては間違いない。しかし、これまでの日本企業の仕組みを温存したままでは大きな問題が起こると予想される。
例えば、入社以来20年経理一筋の経理マンを営業に異動させると、パフォーマンスが落ちる可能性が高い。異動が不利に働くため、嫌がる人が続出するはずだ。
すると定期的な異動が機能しなくなり、同じ職場に人材がとどまる「タコツボ化」が進む危険性が高い。このままでは、新しい能力を高めたりすることが難しくなる。
では、どうすればいいのか。このために重要なのが「リスキリング」だ。たとえば営業マンにリスキリングでAIエンジニアのスキルが加われば、「AIに強い営業マン」「営業もできるAIエンジニア」というように、これまでのキャリアに付加価値が加わる。
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