次の狙いは「中東」?欧州鉄道メーカー最新事情 水素車両は一段落、目立つ新車の「納期遅れ」
欧州メーカーの地元以外の輸出先としてはこれまでアメリカやアジアが多かったが、砂塵対応を施した車両の登場で、今後の新たな輸出先として中東地域に注目が集まっていることがうかがえる。
昨今、欧州では車両の納期が守られず、何年も延期されることが珍しくない。シーメンスがこの課題に対応したのが、近郊用車両「ミレオ・スマート」だ。注文を受けて試運転から運用開始まで、わずか18カ月以内に完了するとしている。
これまで以上にレディメイド化を徹底し、国や地域に合わせた特別注文をやめ、工場では電化方式や信号方式など最低限の仕様に合わせてパーツを組み合わせるだけにとどめて納期の短縮を図った。ミレオ・スマートは欧州の主な国の鉄道で認証を得ており、試運転後はすぐに営業開始が可能としている。メンテナンスパッケージを選択すれば、契約期間中の日常的な保守はもちろんのこと、故障などはすべてメーカーが無償で対応する。
チェコ鉄道向けの特急用客車「ヴェクトレイン」も展示された。シーメンスはオーストリアの優等列車「レイルジェット」の新型(2024年4月6日付記事『オーストリア鉄道「新型レイルジェット」の大進化』参照)を製造しているが、このチェコ向け客車は、旧型レイルジェットと同じ旧世代の客車プラットフォーム(ヴィアッジョ・プラットフォーム)を採用し、運転台付き制御客車の前面デザインだけを機関車(ヴェクトロン)に合わせて変更している。
前面デザインの変更は旧型レイルジェットの前面構体が現行の安全基準(TSI等)に適合しないことが理由だ。同車は暫定的な営業を開始しており、まもなく本格的な営業を開始する予定だ。
新型TGV難航で精彩欠くアルストム
アルストムは、フランスの高速列車「TGV-M」として導入が計画されている、最新の「アヴェリア・ホライズン」が展示されると思いきや、結局今回も展示されることはなかった。アヴェリア・ホライズンは試運転が続いているものの結果が思わしくなく、すでに納期の遅延が報じられており、展示できる状態にはないようだ。既存のTGV規格から大幅な変更を加え、旧世代との互換性をあえてなくしたが、この決断ははたして吉と出るか凶と出るか。
そんな状況もあり、同社の出展は2階建て連接電車「コラディアMAX」と、旧ボンバルディア由来の「TRAXX3」機関車、そしてベルリン市向け低床トラムといったラインナップにとどまった。過去数回は水素燃料車両をいち早く展示発表し、ドイツではすでに営業運転を開始したものの、故障続きでまともに走らないという状況から、今回は展示がなかった。
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