【前編】板橋区とスダチの騒動で炎上「不登校ビジネス」何が問題視されたのか 「わらにもすがる思い」孤立し不安に陥る保護者

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小川氏は、不登校の根本的な原因は「正しい親子関係を築けていないこと」にあるとしている。正しい親子関係とは、親が家庭の主導権を握り、ダメなことはダメという厳しさもありながら、愛情深く温かく子どもを守ることのできる関係とのことだ。

具体的な支援としては、サポーターと呼ばれるスタッフが、毎日オンラインを通じて保護者に対して親子の関わり方を提案・助言する。子ども本人を直接支援するわけではない点が特徴だ。そしてサポーターの助言の下、親は「毎日の起床時間・就寝時間」や「スマホやデジタルゲームの禁止」などのルールを決め、これを守るよう子どもに求める。こうして親が家庭の主導権を握る一方で、1日10回以上褒めるなど、子どもにたっぷりと愛情を注ぐことで子どもの自己肯定感を高めていくという。

これらの取り組みの継続により、正しい親子関係が構築され、短期間で再登校できるようになる、というのだ。なおスマホやデジタルゲームの禁止は、子どものデジタル依存が不登校を長引かせる要因になっているという考えによるものだ。

当事者に再登校の心理的圧力がかかることを懸念

では、板橋区に公開質問状を提出した市民団体らは、何を問題視したのか。提出団体の1つであるNPO法人多様な学びプロジェクト代表理事の生駒知里氏は、次のように話す。

生駒知里(いこま・ちさと)
特定非営利活動法人「多様な学びプロジェクト」代表理事
3歳から18歳まで6男1女の母。「街を学び場に!」をモットーに、学校外で育つ子どもも含めたすべての子どもたちが自分らしく育ち、安心と幸せを感じられる社会をビジョンに、「『多様な学び』をみんなの当たり前にする」をミッションに活動。学校外で育つ子が平日昼に気軽に立ち寄れる地域の場所、全国550カ所以上を紹介するウェブサイト「街のとまり木」、不登校の不安を安心に変えるオンラインコミュニティー「とまり木オンライン」等を運営
(撮影:福山楡青)

「私たちがまず懸念したのは、自治体が再登校のみを目標とする不登校ビジネス事業者と手を組むことで、不登校の子どもや保護者に再登校の心理的圧力がかかり、孤立を深めることになるのではないかということでした」

文部科学省は2016年に出した「不登校児童生徒への支援のあり方について(通知)」の中で、「不登校児童生徒への支援は、『学校に登校する』という結果のみを目標にするのではなく」と言明している。板橋区の「不登校ガイドライン」にも、同様のことが明記されている。

にもかかわらず今回、そうした指針とは異なると思われる事業者との連携が取り沙汰されたため、「区は本音では再登校を望んでいるのではないか」という不安感を保護者や子どもたちに抱かせてしまったのでないか、と生駒氏は言う。

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