留意すべきは、政策メニューがすぐさま一気に提供されるとは限らないことだ。「優先順位をつけ、経済情勢を見ながら実行に移すだろう。1期目のトランプ政権は減税や追加関税をマイルド化して実施したが、今回もその可能性がある」と矢作氏は指摘する。
トランプ氏の勝利が改めて示したのは、コロナ禍後のインフレが人々の生活に深刻なダメージを与え、現状への不満が大きいことだ。
CNNの大統領選出口調査によると、低・中所得層の支持を得ていたのは以前なら民主党候補のほうだったが、今回は共和党候補へと逆転した。高金利でも底堅い米国経済の内実は、高所得層だけが消費を伸ばす格差拡大だったことが反映されている。
こうした経済情勢で次期政権は、インフレ抑制に働く政策、例えば化石燃料の生産を拡大させる規制緩和をまず行うとみられる。そしてインフレが落ち着いた段階で景気拡大に働く政策、さらに関税のような負の影響も及ぼす政策を実行に移すことが想定される。
市場は揺れ動く展開に
市場の行き過ぎた期待やリスク懸念が剥がれ落ちれば、逆回転する可能性もある。トランプ氏は米国民の支持を維持すべく強気な言動を繰り出し続けると思われ、市場は期待の高まりと後退を繰り返し、大きく変動する展開となるだろう。
日本企業に大きな影響を与えるのが、「インフレ抑制法(IRA)」の行方だ。バイデン政権下で脱炭素促進を兼ねて制定され、EVや水素製造など多岐にわたり補助金や税額控除を行う。
トランプ氏は気候変動対策に否定的で、項目によっては修正も想定される。議会選で上下院とも共和党が優勢のため修正の実現可能性は高まるが、発効した法律や支出の変更が許容されるのか、司法判断は不透明だ。
大統領就任式は来年の1月20日。第2期政権の発足に向け、メンバーの人選から政策の行方が取り沙汰される。市場が揺れ動く局面は続きそうだ。
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