受験パターンの構築では早期に「合格」を確保
中学受験生の保護者は、胃の痛い日々を過ごしているころかもしれない。わが子の模擬試験の結果が次々と返却され、その数値をもとに受験校を悩んでいる人も多いだろう。よくも悪くもネットが普及し、この学校は受験生が増えそう、あるいは減りそう、といった情報も入ってくるため、気が気でないかもしれない。
さて、首都圏の中学受験は依然として厳しい世界だ。見事第1志望校に合格できる子よりも、その夢が叶わない子どもたちのほうが圧倒的に多い。全員が全員、中学受験を「後悔なく」終えるのは不可能である。それでも私は、受験校の選定次第で「後悔」を軽減できる可能性があると思うのだ。
具体的にはまず、わが子の秋の模擬試験の平均偏差値を尺度に、受験校を「挑戦校」「実力相応校」「安全校」に分類する。
そして実質倍率が落ち着く2月1日午前、2月1日午後、2月2日午前のどこかに「安全校」を組み込み、合格を確保するのだ。たとえ第1志望校が不合格になってしまっても、「安全校」に合格していれば、そのことが2月3日以降の入試を闘う気力や意欲を授けてくれる、と私は考えている。
わが子にとって魅力ある「安全校」を探す
中学受験の「後悔」を軽減する方法はいたってシンプルで、親子ともに「ここなら中高6年間通いたい」と思える「安全校」を見つけることだ。
「安全校」となる学校は当然、偏差値一覧表における偏差値レベルは下がるだろう。しかし、中高一貫校の価値は偏差値だけでは決まらない。もちろん、偏差値の高い学校は、いわゆる“一流大学”への進学者は多いはずだ。しかし、「その学校に入れば一流大学に進学できる」と約束されるわけではない。しょせん、合格実績はよその子どもたちの結果であり、わが子が同じ道をたどれる保証はどこにもない。これは、どの学校でも言えることだ。
そこでいったん、偏差値や合格実績という尺度を外して学校選びをしてみてほしい。そうすればきっと、わが子が6年間楽しく通えそうだと心から思える「安全校」が見つかるだろう。2月1日まで、2カ月以上ある。まだ間に合うので、保護者は「魅力ある安全校」を探すためにぜひ行動してほしい。
具体的には、わが子の秋の模擬試験から4科平均偏差値を算出し、偏差値一覧表を見て、その数値から黒ペンでまっすぐ横線を引く。さらに、そこから偏差値「-4」のところに、色ペンでまっすぐ横線を引く。色線より下の学校からいくつか気になるところを見つけたら、それらの「学校説明会」や「文化祭」の情報を活用してほしい。
学校説明会
学校説明会は、あくまで保護者が対象だ。親としてはつい、あれもこれも知りたくなるところだが、次の軸を設けてみてはどうだろうか。「この学校は6年間の中高一貫教育で、どのような子どもたちを育てたいと望んでいるのか」。シンプルながら、学校選びにおいて1番大事にしたいことでもある。この学校で、わが子が6年間の学校生活を謳歌している姿を思い描けるかどうか。この視点を持って複数の学校説明会に参加すると、各学校の差が顕然とするだろう。
文化祭
文化祭は「内輪ノリの場」あるいは「外向けのイベント」なので、なかなか普段の学校生活をうかがい知るのは難しいかもしれない。それでも、教員と在校生の関係性や、在校生たちの表情や言動から、少なからずどんなタイプの子に向いた学校かは見えてくるものだ。なにより、文化祭の活気を感じることで、子ども自身が「この学校だったら通いたい」という気持ちを持つかもしれない。
「第1志望校に落ちてよかった」と語る卒業生
私は大手塾時代から現在のスタジオキャンパスまで、計30年以上、中学受験生たちの指導を続けてきた。私の元には数日に1度のペースで卒塾生たちが遊びに来て、学校の成績や部活動などについて報告してくれる。彼ら彼女たちがこう口にするのを、何度耳にしてきただろうか。
「第1志望校に落ちて良かった。○○中学校は本当に楽しい!」
もちろん塾講師としては、第1志望校合格を叶えられなかったことに申し訳なさや後ろめたさを感じているのだが、こうした報告を受けると、救われる気持ちになるのと同時に、「ああ、よい学校に巡り合えて、本当によかった」と心から思うのだ。
中学受験生たちは、膨大な時間と労力をかけて勉強に打ち込んでいる。毎年の光景とはいえ、季節講習会中に朝から晩まで勉強に専心する姿を目にすると、「この子たちは本当にすごい」と誇らしい気持ちになるものだ。
彼ら彼女たちは入試本番に向けて、習い事や趣味、友人と遊ぶ時間……その他さまざまな時間を犠牲にして勉強に励んできた。だからこそ、たとえ第1志望校から不合格を突き付けられてしまっても、少しでも後悔を「軽減」できる中学受験にして終えてほしい。そのためにも今こそ、保護者は魅力ある「安全校」を見つけてほしい。
(注記のない写真:cba / PIXTA)