少数与党石破政権「続投を納得させることが必要」 政治アドバイザー・久米晃氏が語る政権の今後

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――石破総理は特別国会で首相指名を乗り切っても、その後の国会運営では「103万円の壁」対策やガソリン減税を主張する国民民主党との協力が不可欠になってきます。一方、国民民主党も「取り込まれた」とみらるリスクが高い。

維新とは選挙区で激しく戦ったので、今自民党が頼れる野党は国民民主党しかいない。だが、国民は来年の参議院選挙で労組系議員(の改選)を抱えており、与党に近づくことはリスクを伴う。与党への要求はかなりハードルを上げないと組めない。一方の自民党は、かなり妥協せざるをえない。

すでに森山幹事長と(国民の)榛葉賀津也幹事長の協議は始まっているようだが、自民党は譲歩に譲歩を重ねることになる。逆に国民民主党は要求をのませなければ、少数与党の補完勢力とみられ参院選は大敗する。

「自社さ」政権では表の国会対策委員会(国対)で蹴飛ばし合っていても、夜は一緒に飲んで妥協点を探るような国対政治があったが、いまの時代にそれが受け入れられるのか。いずれにせよ、内外の課題は山積している。うまくやってもらわないと、国民が不利益を被る。

有権者の政治に対するあきらめ、さめた目線

――石破政権はいばらの道を歩むことになります。

まずは苦境苦戦をはい上がってきた自民党の現職議員に続投を納得させることが必要だ。その説明がまず第一歩になる。みんな「ふざけるな」と思っている。落選した「亡霊」も永田町には渦巻いている。

くめ・あきら 1954年愛知県生まれ。大学中退後、業界紙記者を経て1980年から自民党職員。2002年党選対事務部長、2011年から事務方トップの事務局長兼任。19年に定年退職。現在、選挙・政治アドバイザーとして活躍 (撮影:今井康一)

――来年は参議院選挙もあり、「石破降ろし」が来春の予算案成立後に勃発するのではとの見方もあります。

参院選の前に来年7月に任期満了を迎える都議会議員選挙がある。4月には衆参の補欠選挙もあるかもしれない。派閥がなくなって党のまとまりも弱まり、先は見通しづらい。ただ、今回の総選挙でも森山幹事長と石破さんはバラバラで、総裁の言ったことを幹事長がひっくり返したり、逆に石破さんがひっくり返したりというのがある。

知恵を絞って石破さんを支えるという人がいれば別だが、越えなければならないハードルはあまりにも多すぎる。

――今回の選挙で特に印象的な選挙区はどこでしたか。

福岡11区の旧二階派の実力者、武田良太氏の落選には仰天した。ただ、当選した維新の新人は長いこと辻立ちを続けて努力してきた。地元の田川市長選挙では武田氏の推した候補が敗れるなど前兆はあった。全体として、やはり最後は地力が問われた選挙だったと思う。安倍政権の風で当選してきた議員は地盤を築く努力をしてきたか、地元の地方議員との関係は良好だったか、そこが問われた選挙でもあった。

――自民党の地盤沈下が進んでいるということですか。

そうだ。有権者の政治に対する期待は複雑化している。昔のように公共事業をつけたり予算陳情を聞いたりするだけでは票は取れない。年金から米の値段に至るまで、有権者にはあらゆる思いがある。それをすべて聞き入れていたら社会主義国家のようになる。時には国民に厳しい現実を理解してもらわなければならない場面もあるが、やはりこの人が言うなら仕方ないという信頼感がなければ国民は納得しない。

トップには何よりそれが求められている。今回、投票率が戦後3番目に低い数字(小選挙区で53.85%)にとどまったことは、与党への逆風でも野党への追い風でもなく、有権者の政治に対するあきらめ、さめた視線を物語っていると思う。

森 創一郎 東洋経済 記者

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もり そういちろう / Soichiro Mori

1972年東京生まれ。学習院大学大学院人文科学研究科修了。出版社、雑誌社、フリー記者を経て2006年から北海道放送記者。2020年7月から東洋経済記者。

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