「大統領選が終われば株上昇」とは限らない大接戦 どちらが勝っても議会が政策実現を左右する

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他方で、トランプ氏が大統領になり、上下院で共和党が大幅な多数派となった場合には、大規模な景気対策が実現可能となる。そして、景気を下押ししうる追加関税措置をスケールダウンする必要がなくなることも想定される。

また、トランプ氏はすでに大統領を1期4年務めており、今回勝利すれば、3選禁止ルールにより、2028年の大統領選挙には出馬できない。つまり、再選を考慮する必要がない以上、世論の批判等を過度に考慮せずに、自身が実現したい政策を推し進めていく可能性もある。

追加関税措置は議会承認を経ずに、大統領権限で実施できるものも多く、トランプ氏が景気への影響を顧みずに実施していく可能性自体は否定できないだろう。

大統領選が終わってもリスクオンとはいかない事情

大統領選イヤーの株式市場動向について、過去のトレンドを踏まえれば、投資家センチメントは5〜6月から悪化し、夏場に低迷した後、イベントを通過した11月以降に回復していくという傾向がある。

ただし、2024年の投資家センチメントは過去の大統領選イヤーに比べてリスクオンの姿勢が継続してきた。そして、アメリカの主要株価指数であるS&P500は2024年10月にも最高値を更新している。

過去の経験則では、5月から夏場にかけてのリスクオフ姿勢があるからこそ、大統領選挙というイベント通過後の回復余地があったともいえる。足元の旺盛な投資家センチメントを踏まえれば、大統領選挙後にさらにリスクオン姿勢が増すかは慎重に見るべきかもしれない。

とりわけ、今回の選挙年が大接戦であることから、2020年のトランプ氏のように、選挙結果を認めず、2021年1月に国会議事堂襲撃事件が起きるなど、大統領選挙を終えた後に混乱が激化するような事態も想定される。

市場が政治・経済の不透明感を嫌うとすれば、大統領選挙が終わったとしても楽観ムードが広がりにくい可能性がある。

アメリカの投資家の中では、「大統領選挙後を期待しすぎるべからず。足元の好調な株価で益出しし、早くからサンクス・ギビング(11月28日)休暇を楽しもう」という声もある。

いずれにせよ、当面はさまざまな思惑が市場の中で交錯する可能性があることから、勝利した大統領の政策や議会の構成などを精査し、チャンスやリスクを整理することで拙速な判断を避けることが重要だろう。

矢作 大祐 大和総研 主任研究員

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やさく・だいすけ

2012年大和総研入社。19年から米国経済・金融を担当。23年12月に米ニューヨーク勤務から帰任。

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