与党大敗が示す「デフレ脱却」の賞味期限切れ 「手取り増」はさまざまな課題を詰め込めるフレーズ

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

なお、今回の与党惨敗を受けて2009年9月の自民党下野が引き合いに出されることが多い。

当時はリーマンショックを受けた超円高とこれに伴う国内景気の冷え込みが手伝って、時の政府・与党に厳しい世論が高まったと言われていた。しかし、実は前年には1バレル140ドル以上の原油価格急騰があり、消費者物価指数(CPI)の上昇率が2%をにわかに超えるということがあって、数々の値上げが確認された後での選挙であった。

今回の総選挙も過去2年にわたる物価上昇率の急騰を経て、物価高が争点化する中で行われている。欧米も同様だが、やはり国民が物価高に窮する状況で行われる選挙は時の与党に厳しい審判がくだりやすいということなのだろう。

まだ、具体的な政権枠組みははっきりしておらず、確たることは言えないが、勝敗ラインである自公過半数確保が達成できなかったことで石破首相を含めた執行部の責任問題は免れない。

野党が安易に政権協力すれば、失速しかねない

この点、現状では続投の意思が表明されているものの、同時に野党の一部と連携する意思も示唆されている。裏金議員の追加公認や無所属議員の取り込みだけでは間に合わないほどの大敗であるためだが、野党との連携は簡単ではない。

まず、対立軸の主役である立憲民主党が自公政権に入ることはないのは当然として、国民民主党や日本維新の会もその意思がないことを表明している。どこの国でも同じだが、与党を追い詰めた野党が与党に部分連合という形で手を貸すことで政権運営に関与することは確かに可能であるものの、結果として野党としての存在意義を喪失するというケースは多い。

大連立に手を貸したことでドイツの社会民主党(SPD)は長年、メルケル前首相が擁するキリスト教民主同盟(CDU)の日陰に置かれ、存在意義が問われる状況に追い込まれていた。与党への安易な協力は野党の党勢失速に直結しかねず、簡単には飲めない。

金融市場の観点からは金融政策運営への示唆も考えたいところである。

今日のところの相場反応はさておき、金融市場で議論を呼んだ「日銀の物価安定目標を2%から0%超へと変更する」という立憲民主党の公約をどう考えるべきかというのは重要な論点である。

次ページ国民民主党の巧妙なメッセージ
関連記事
トピックボードAD