芸術の秋、「和×モダン」の奥深さ堪能する名建築 語りたくなる意匠や背景、あの建築祭にも注目

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直線的で工業的な見た目の中に「和」が感じられるのは、内部と外部とを巧みにつなげる空間の操作が、伝統建築における軒下や雪見障子を思わせるからかもしれない。具体的な形で日本らしさを表現するのではなく、空間の気配りや精緻なものづくりによって「和」を醸し、新たな「モダン」を展開しているのである。

東京国立博物館法隆寺宝物館内側
東京国立博物館法隆寺宝物館(東京都台東区)の内側から水盤を臨む(撮影:倉方俊輔)

11月1日~10日には、京都でも45の建築を一斉公開する「京都モダン建築祭」が開かれる。筆者は2022年の初開催から毎年、こちらの実行委員も務めているので、お勧めの建築を紹介したい。

パスポートの購入で申込不要・自由見学できる建築の中には、祇園祭の山鉾をモチーフに伊東忠太が設計した「大雲院 祇園閣(旧大倉喜八郎別邸)」(1927年竣工)、昭和初めの流行を採り入れた花街のシンボル「先斗町歌舞練場」(1927年竣工)、伝統ある東本願寺の境内を壊さぬよう地下に空間を設けた高松伸の着想が光る「東本願寺視聴覚ホール」(1998年竣工)などがある。どれも普段は非公開、京都らしい「和×モダン」の建築だ。

その最新のものとして、京都に根ざした建築家・魚谷繁礼の「SHIKIAMI CONCON」(2019年竣工)を紹介したい。長屋とコンテナという、まるで異なるものを組み合わせた複合テナント施設だ。

SHIKIAMI CONCONの長屋
SHIKIAMI CONCON(京都市中京区)。この長屋の上にコンテナが積み重ねられている(撮影:倉方俊輔)

路地が続き、そこにコミュニティーが生み出されてきた京都らしい空間を維持していく試みで、「共創自治区」をコンセプトに掲げている。木造の長屋を覆うように屋根がかけられ、その上に重ねられたコンテナが耐火性を確保しながら、路地を立体的に広げている。

SHIKIAMI CONCON
長屋3軒、コンテナ19基から成るSHIKIAMI CONCON(京都市中京区) (撮影:倉方俊輔)

「和×モダン」の中にも、多様性がある。この秋、建築から日本を再発見していただけたら嬉しい。

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倉方 俊輔 建築史家、大阪公立大学教授

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くらかた しゅんすけ / Shunsuke Kurakata

1971年東京都生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業、同大学院修了。博士(工学)。日本近現代の建築史の研究と並行して、日本最大級の建築イベント「東京建築祭」の実行委員長、「イケフェス大阪」「京都モダン建築祭」の実行委員を務めるなど、建築の価値を社会に広く伝える活動を展開している。著書に『京都 近現代建築ものがたり』(平凡社新書)、『東京モダン建築さんぽ』『神戸・大阪・京都レトロ建築さんぽ』(エクスナレッジ)、『伊東忠太建築資料集』(ゆまに書房)ほか。「新美の巨人たち」「マツコの知らない世界」などメディア出演も多い。

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