芸術の秋、「和×モダン」の奥深さ堪能する名建築 語りたくなる意匠や背景、あの建築祭にも注目
「インド様式」の寺院とよく言われる。確かに真ん中にあるアーチ型の屋根は、岩山に横穴を掘って仏教寺院とした古代インドの石窟入口の形からとったもので、左右に付いているのもインド風の塔である。
よく見ると、中央が一番目立ち、左右対称で両脇にアクセントがある。そんな全体の形は、迎賓館赤坂離宮や国会議事堂といった洋風の建築に似ていないだろうか。
実は、築地本願寺の骨格にあるのは、幕末に日本が開国してから、頑張って学ぼうとしてきた西洋建築にほかならない。本堂内に履物を脱がずに入れて、いすに腰掛け、時には雅楽やパイプオルガンの音色に包まれた仏前結婚式に立ち会うこともできる。仏教をもっと身近にとの思いから、開かれた西洋建築のあり方を採用した近代的な寺院なのだ。
仏教発祥の地であるインドのデザインはもちろん、本堂内に入る手前に並ぶエジプト風の柱やステンドグラス、床のアラベスク文様風のタイルなど、世界各地の意匠が取り混ぜられている。
本堂の正面に翼を持った獅子がいるのをはじめ、牛や馬、象、孔雀、猿など、13種もの動物像が階段まわりに隠れているのも楽しい。これらが必ずしも仏教説話に由来するものでないところも、近代的な寺院らしい。
そして、本堂内部は和風だ。鉄筋コンクリートでつくった和風の梁の上に、さらに木造の組物を架けて、浄土真宗本願寺派の正統なつくりが再現されている。
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