芸術の秋、「和×モダン」の奥深さ堪能する名建築 語りたくなる意匠や背景、あの建築祭にも注目

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日本の伝統的な建築は、必ずしも堂々としたデザインには向いていない。近世の城郭のような形であれば、博物館に適していそうだが、重々しさやけばけばしさが懸念される。そこで渡辺仁は、インドネシアの民家にヒントを得て東京国立博物館をデザインした。軒の出を少なくし、左右の屋根をずらすことで頭でっかちな印象を避け、立ち上がる壁面とバランスを取っている。

谷口親子が織りなす「和×モダン」の美を堪能

次に、本館の右手に構える「東京国立博物館東洋館」(1968年竣工)に注目したい。一見あっさりしており、本館のようには装飾が施されていない。これは第2次世界大戦後の1950〜60年代に世界を席巻した、「機能的でないものや昔風に見えるものを取り付けるのは旧式で、進歩に反している」という考え方が影響している。

そうした時代に、装飾ではない形で日本らしさを表現しようという思いから、丹下健三をはじめとする世界的建築家が日本から誕生していく。この東洋館を設計した谷口吉郎も、そんな戦後建築家の1人だ。

東京国立博物館東洋館
装飾ではない形で日本らしさを表現した、東京国立博物館東洋館(東京都台東区)(撮影:倉方俊輔)

構造を支える鉄筋コンクリートの柱と梁をバランスよく整え、それを外観に見せることで、日本の木造建築の率直な美しさを彷彿とさせている。館内の壁に貼り詰められた白いタイルは、日の光をやわらかく映し、障子の清らかさを思わせる。いわば、隠れ和風のデザインなのである。

「和」を取り入れることで「モダン」が前進する。上野公園で3つ目に見たいのは、そのことを世界に知らしめた建築家の作品、「東京国立博物館法隆寺宝物館」(1999年竣工)だ。これは、「ニューヨーク近代美術館(MOMA)新館」(2004年竣工)などの設計で著名な谷口吉生によるもの。先の谷口吉郎の息子である。

東京国立博物館法隆寺宝物館
巧みな空間操作のディティールを堪能したい、東京国立博物館法隆寺宝物館(東京都台東区)(撮影:倉方俊輔)
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