急性中毒が増加する「子どものカフェイン依存」、イライラ・興奮が出たら対策を 飲料から発展する「カフェイン錠剤」の影響深刻
こうした効果を求めて多忙なビジネスパーソンなどがカフェイン入りのドリンクなどを愛飲していることも多いが、気になるのが若年層へのカフェインの浸透だ。上條氏は救命救急という臨床の場で急性中毒の患者を数多く診療しているが、カフェインによる急性中毒はあるときを境に増えているという。
「2013年にとあるエナジードリンクが自動販売機に並ぶようになった時期から、カフェイン中毒で搬送されてくる患者が増加傾向にあることに気づきました。調査をしてみると、私が勤務する救急センターだけではなく、複数の施設で同様の傾向があることがわかりました」
一見すると、エナジードリンクによってカフェインの急性中毒に陥る人が増えたと考えてしまいそうだが、上條氏はその仮説については懐疑的だ。
「ある男性が急死して大学病院の法医学教室で解剖したところ、致死濃度のカフェインが検出されました。周囲の方からは本人がエナジードリンクを常飲していたとも聞いていたようですが、同時に胃内から検出されたのはカフェインの錠剤でした。救急センターに搬送されてくる人の多くは、エナジードリンクだけでなくカフェインの錠剤を多量摂取しています。代表的な製品の『エスタロンモカ』に含まれるカフェイン量は、1錠あたり100mg。カフェインは約1000~2000mgから中毒症状を起こすとされているので、コーヒーやエナジードリンクよりも容易に過剰摂取ラインを超えてしまうんです」

実は、エナジードリンクのカフェイン含有量はコーヒーとさして変わらない。だが、より飲みやすいエナジードリンクで覚醒作用を感じた人が、さらに手軽で作用の強いカフェイン錠剤へと手を伸ばす――。そんな構図が、搬送件数増加の背景にはありそうだ。
「やめられない」身体依存に陥るケースも
とはいえ、エナジードリンクはコーヒーなどと比べて子どもも飲みやすい風味づけがされており、大容量の缶も販売されている。子どもが口にし続けることで、カフェインに依存してしまうリスクも気になるところだ。
「15歳以下の子どもがカフェインの錠剤を口にすることはないでしょうから、誤飲などがない限り急性中毒に陥ることはあまりないと思いますが、『眠気覚まし』などを目的に毎日のようにエナジードリンクやカフェイン飲料を飲み続けることで身体的な『依存状態』に陥ることは考えられます」
依存状態とは、どのような状態なのだろうか。
「カフェインには興奮作用があるので、適量を摂取すれば眠気やだるさを取り除くのに有効です。ところが、摂りすぎると過剰に興奮し、イライラや落ち着きのなさといった症状が現れます。小児科からは、授業中に落ち着いて座っていられない子が、よくよく聞いてみるとカフェインの摂りすぎだったという事例も聞いたことがあります」