部活動の地域移行で保護者が「外部ボランティア」を担う際の法的責任とは 単発的な見守り役でも「注意義務」はある

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見守り役の外部ボランティアには、練習中止の判断まで求められるわけでは通常ないように思います。しかし、見守りボランティアに求められている役目というのは、教員や指導者が不在であることを前提として「素人の目から見たとしても、生徒・児童に危険がある状況にあれば、それを避ける役目」を果たすことですよね。そうだとすると、天候の状況から、落雷の危険があると明らかに判断できる状況であれば、生徒・児童の生命が第一ですから、練習を中止させて、安全な場所に避難させる義務があったと認められる可能性もあると思います。

加入中の火災保険や自動車保険に「個人賠償責任保険」はあるか

――では、見守りボランティアをする場合、留意すべき点はどこにあるのでしょうか。また、賠償責任保険への加入など、事前事後にできる対策などがあれば教えてください。

外部ボランティアであっても、危険を予見できるのであれば、抑止したり、危険を避けたりする義務があります。万が一事故が発生し、損害賠償責任が求められることを念頭に置いた場合は、保険に入っているかどうかは重要になります。実は、火災保険や自動車保険などには、個人賠償責任保険や個人賠償責任特約というものが付帯されていることがあります。

これは、日常生活における事故について法律上の賠償責任を負うときに保険金が支払われる商品ですが、保護者が行うような単発的な見守りボランティアであれば、個人賠償責任保険の適用がある可能性があります。まずは、ご自身が加入されている保険をしっかり調べてみてはいかがでしょうか。

他方で、見守りボランティアではなく、指導者として部活動の指導に日常的に関わるような場合には、日常生活の事故を念頭に置いた個人賠償責任保険では対応できない可能性もあると思います。

――担当者の病欠などで、代理としてやむなくボランティアをするケースや、誰かに無理を言ってボランティアを依頼するケースもあると思います。少しでも多くの担い手を確保するために、個人が負う責任範囲を最小にすることはできるのでしょうか。

結論から言えば、法的な責任を軽くすることは難しいです。参加する生徒・児童の保護者に「事故があっても、一切の損害賠償責任を追及しません」などと一筆書かせたとしても、このような合意は無効であると考えられますので、そうした対応で責任を軽減することはできません。単発の外部ボランティアであっても責任を負うというのが基本的な考え方です。

有名な裁判例として、子ども会のハイキングにおいて小学生が川遊びの最中に溺死してしまった事故がありましたが、ボランティアで参加した引率者について損害賠償責任が認められたものがあります。ただし、最終的には過失相殺(落ち度の割合を考慮して損害額を調整するルール)によって、損害のすべてを賠償するのではなく、一部の賠償を求められましたが、責任自体がなくなるわけではありません。

地域移行は「学校主体型」がスムーズ、保護者も部活動に参画を

――外部ボランティアでも法的にはノーリスクであるわけではないということですね。

法的責任について知れば知るほど、部活動の地域移行に関わりたくないと思う方も出てくるかもしれません。教職員の人手不足の中、文科省や教育委員会としては部活動を学校の外に出したいのだと思います。その試み自体は、決して間違っていないと思いますが、保護者の目線からすると、学校主体型、すなわち、学校が主体となり部活動を継続しつつ、多くの部活動指導員を外部から任用して外部の人材を取り込むという方策の方が、教職員の負担軽減と安心安全な運営が両立すると受け止められる可能性もあるように思います。

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