部活動の地域移行で保護者が「外部ボランティア」を担う際の法的責任とは 単発的な見守り役でも「注意義務」はある
しかし、公立学校の教職員が、部活動の受け皿団体となった外部団体の指導者として関わる場合は、公務員として関わるわけではないので、教職員個人も被害者との関係で直接的な責任を問われる可能性があります。外部団体受け皿型では、指導者個人も被害者との関係で直接的な責任を負いますし、その団体自体も使用者責任を負います。なお、私立学校の場合は国家賠償法の適用がないため、学校主体型であっても、落ち度のあった教職員個人が損害賠償責任を負う可能性があります。
このように、特に公立学校の先生は、地域移行後にどのような形で部活動に関わるかによって、自身の法的な責任が変わりますので、十分留意する必要があります。
素人の保護者や地域住民も、法的責任を負う可能性はある
――では、外部ボランティアについてはどうでしょうか。
学校主体型であろうが外部団体受け皿型であろうが、外部ボランティアであっても、一定の仕事を引き受け、その仕事に落ち度が認められれば(注意義務違反があれば)、法的責任を負う可能性があります。無償のボランティアであるからといって、法的な責任自体が免除されることにはなりません。外部ボランティアといっても、日々の練習を指導する指導者として関わるのか、単発的な見守りボランティアとして関わるのかによっても、法的な責任に違いがあるといえます。
例えば、顧問となる教員が不在の際に、単発的に生徒・児童の見守りを行うことが求められる外部ボランティアについていえば、教職員に求められる注意義務と、外部ボランティアに求められる注意義務は異なると考えられるため、法的責任の範囲も異なってくると思います。
――外部団体受け皿型で、素人の保護者や地域住民が生徒・児童の見守りのボランティアをする際に賠償責任を負う範囲を教えてください。どの程度の見落としや不注意に責任を負うことになるのでしょうか。
外部ボランティアでも、「注意できたのに注意しなかった」のであれば、法的責任を負う可能性があります。「まさに危険な状態」を目撃したときには注意する義務があるからです。例えば、子どもがサッカーゴールにぶら下がっていて、今まさにゴールが倒れそうなときなどは、子どもに注意して制止させる義務があります。素人の見守り役であっても、生徒・児童の見守りを引き受けている以上、そういった危険な行為について制止しなければ、注意義務違反があり、責任を負う可能性があるということです。
――部活動前後の時間、例えば往路帰路での事故や、活動前に子どもたち同士でふざけていてケガをした場合などについて、外部ボランティアが責任を負う可能性はありますか。
どのような仕事を引き受けていたのかによります。引率という仕事を引き受けていたのであれば、その過程でボランティアに落ち度があれば、責任を問われる可能性があります。「落ち度があれば責任を負う」、これが法律の世界の原則です。では、どこまで注意義務があるのか。それは、外部ボランティアが、日々の練習計画の作成を含めた指導まで求められていたのか、教員や指導者が不在のときの単なる見守りだけを求められていたのかによって異なってきます。
――天候などに起因するケガや事故について、単なる見守りボランティアが責任を負う可能性はあるのでしょうか。
この判断は難しいですね。見守りボランティアの責任が問われた裁判例は把握していないです。サッカー部の監督であった教職員について、サッカーの試合中に落雷により生徒が負傷した事故について、試合を中止して避難させるべき義務があるとした判例があります。