大手証券が軒並み赤字転落で大リストラへ、縮小均衡しか打つ手ない証券界の現実
11月1日に野村ホールディングスが決算発表を行い、大手証券5社の2011年度第2四半期(7~9月期)決算が出揃った。海外・法人部門が手薄のSMBC日興証券を除き、各社とも欧州をはじめとする市場環境の悪化を受けて最終損益が赤字となった。
野村は税前損益が446億円の赤字で、最終損益も461億円の赤字となった。部門別の税前損益は、アセット・マネジメント部門が前年同期比13%増の47億円だった一方、国内営業部門は投信販売の減少で同53%減の107億円、海外を含むホールセール(法人)部門がトレーディングや株式引受の不振により731億円の赤字だった。四半期ベースの赤字転落は、09年1~3月期以来、10四半期ぶりとなる。
想定を上回る環境悪化を受け、野村は第1四半期決算時に発表した年間4億ドルのコスト削減に追加して、新たに8億ドル、計12億ドルのコスト削減を行うと発表した。前回の4億ドル削減は欧州中心に海外で380人の人員削減実施が柱だった。
今回の8億ドル追加削減については、ホールセール部門を中心に全社レベルで行うが、「欧州が全体の6割ぐらい、人件費が全体の7割近く」(中川順子CFO)を占める。「損益分岐点を下げるのが目的で、人員数削減の目標は設定していない」(同)という。
野村は08年に旧リーマン・ブラザーズの欧州、アジア部門を継承。米州においても自前で大幅拡充し、海外ネットワークを整備してきた。しかし、海外部門は欧州をはじめ大幅赤字基調にあり、比較的安定している国内営業やアセットマネジメント部門の利益を食い潰してきた。
旧リーマン社員との融和を最優先してリストラを控えてきたが、海外市場の低迷長期化で収支は一向に改善せず、むしろ悪化してきたことで、もう猶予はできなくなった。前回の380人削減と合わせ、海外で1000人を超す人員削減とる可能性がある。
9月末現在、欧州には4492人、米州には2537人、日本を除くアジア・オセアニアには6485人(インドのIT部門含む)が在籍する。
欧州をはじめとした大リストラは今後1年半程度かけて実施すると見られ、来期以降、収支の改善が見込める反面、戦力低下によるトップライン(収入)の減少や現場の士気低下、組織全体の求心力低下が懸念される。