専門職チームと学校が連携して支援、「なごや子ども応援委員会」10年の手応え 全中学校に常勤のスクールカウンセラー配置

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教員の業務負担や精神的負担を軽減

学校現場の教員は応援委員会の取り組みを、どのように受け止めているのか。教員経験のある子ども応援課指導主事の冨田宏行氏は、こう話す。

冨田宏行(とみた・ひろゆき)
教育委員会事務局新しい学校づくり推進部子ども応援課指導主事

「中学校の教員からは『SSWが連絡調整の役割を果たしてくれるので助かった』という声がありました。ケースによっては区役所、児童相談所などさまざまな機関と連携しますが、通常の学校業務をしながら外部機関と連絡を取り合うのは大変ですから、教員にとってはかなりの負担減になっています」

また、専門職の存在は、教員の精神的な支えにもなっているようだ。

「私は小学校での勤務が長かったのですが、SCがいる日は何かあった時も頼れるという安心感がありました。中学校では希死念慮のある生徒が見られることがありますが、常勤のSCがいると緊急時もすぐに対応できますし、教員の不安も軽減されます。また、教員は教育の専門家ですが、心理や福祉の専門家の視点はそれぞれ違いますから、SCやSSWが加わることで指導の幅や可能性が広がります。すぐに解決できない場合でも、薄い紙を重ねるようにそれぞれの見方を重ね合わせることで見えてくるものがあるのです」(冨田氏)

2021年度のアンケート調査では、応援委員会に相談したことがある児童生徒の95.0%、保護者の85.6%が「相談してよかった」と回答しているという。また、教員の96.6%が応援委員会の役割を重要だと答え、82.7%が負担軽減につながっていると回答している。

一方、2014年度に2695件だった相談件数は年々増加し、2023年度には4万2883件となった。相談内容で最も多いのは不登校(1万5551件)で、心身の健康・保健(9165件)、家庭環境(5295件)が続く。

平松氏は、「応援委員会を認知していただいていることの表れであるとともに、これだけ悩みを抱えているお子さんや親御さんがいらっしゃるということだと受け止めています」と言い、今後の取り組みについてこう語る。

「これまでの支援の中で、悩みや心配事の種を就学前から抱えていたというケースも多々あることから、例えば昨年度から幼稚園の非常勤SC配置を始め、今年度は配置時間を倍に増やしました。このように就学前から手厚い支援を行うことで、お子さんが中学生になったとき、さらには大人になったときによい影響があるのではないかと考えており、今後も早期からの支援に力を入れていきます。息の長い展望となりますが、手厚い支援が日本全体に広がるよう、これからも名古屋から発信していきたいと思います」

(文:吉田渓、注記のない写真:名古屋市教育委員会提供)

東洋経済education × ICT編集部

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小学校・中学校・高校・大学等の学校教育に関するニュースや課題のほか連載などを通じて教育現場の今をわかりやすくお伝えします。

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