だが、「日銀は変わった」という論点が定着するほど、「やっぱり変わっていなかった」と思われた時の反動も激しいものになる。そのリスクはある。
現状、金融市場では「四半期に一度利上げする日銀」を前提に価格形成が進められているが、この確度は盤石ではない。
既報の通り、今回の利上げの背景には政治的な要請があった疑いがある。政府・与党にとって、来る解散総選挙で「円安による生活苦」が争点化されるのは避けたい展開であり、要請の意図は理解できる。
「株急落」「利上げダメージ」でも利上げ容認は続くか
しかし、日銀の利上げした後の円相場急伸はともかく、株価急落の契機となる利上げをバックアップする所作は資産運用立国の旗を振る政府・与党として続けられるのか。
今後、株価急落に加え、住宅ローン金利上昇など国民生活に近そうなテーマでネガティブな材料をクローズアップする報道が増えるだろう。そのような状況を前提とした場合、利上げ容認にまつわる情報発信は難しくなるのではないか。
日経平均株価指数は7月高値(11日の4万2224円)から8月2日(3万5909円)にかけて1カ月足らずで15%の調整を強いられる一方、ドル/円相場は149円近傍に留まっている。これは政治的なそろばん勘定に果たして合うのか。
「割に合わない」という話になれば、7月のように政治が利上げを容認する状況はもう生まれないかもしれない。結果、「やっぱり変わっていなかった」という思いの下、日銀への目線は一気に冷める可能性もある。
仮にそうしたイメージ転換があれば、過去の寄稿でも繰り返し議論を重ねてきた需給構造に根差した円安圧力もあって、強い円売りを再び招く可能性がある。
年内は「タカ派的な日銀、ハト派的なFRB」という対照性が円高・ドル安をけん引しやすいとしても、為替・株価の情勢次第で政治的な要請は可変的と思った方が良い。4月以降に直面した日銀の変貌は明らかに非連続的であっただけに、同様の勢いをもってハト派へ急旋回するリスクも念頭に置きたい。
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