あの校長が神戸市教育長に、「開かれた学校づくり」で働き方と教育を変える 教員出身者は68年ぶり、教育長・福本靖に聞く

ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

また、2024年5月より、授業通訳支援ツール「ポケトークforスクール」を導入。これは授業中に教員が話す内容をそれぞれの児童生徒の母語に同時通訳して学習用パソコンに表示するツールで、学校での導入は全国の自治体初の試みとなる。

授業中、「ポケトークforスクール」を使って学ぶ子どもたち

多くの自治体で課題となっている教員の人材確保については、採用選考時の負担を減らすことで教職を志す学生を増やそうと、2025年度の採用選考より「大学3年生等早期チャレンジ選考」を開始。1次試験に合格すれば次年度の1次試験が免除され、教育実習や民間企業の就職活動との両立がしやすくなるこの選考枠には193名の応募があった。採用後の事前研修では、指導案づくりのポイントなど勤務開始後にすぐ役立つ内容も扱い、着任を安心して迎えられるように配慮しているという。

「働き方改革」は量的ではなく質的に見る必要がある

神戸市では、学校給食費の公会計化など、教員の負担を減らす施策も実行しているが、教員の働き方改革に関しては「量的ではなく質的に見ることが重要」だと福本氏は話す。

「勤務時間は以前より短くなっていても、休職・退職に至った若手教員へのアンケートでは、保護者対応も含めた人間関係のプレッシャーが苦しかったという声が多く見られます。1990年代後半ごろから、子どもが抱える問題や保護者の価値観が多様化し、『丁寧な指導』という名の下に個別のクレームや要求に学校が対応しなければならなくなった。その結果、教員が過剰なサービスを引き受けすぎて疲弊してしまっているように思います」

この現状を変えるために福本氏が提案するのが、学校が抱える課題を保護者や地域の人々も含めた「みんなの課題」として共有していくことだ。

「保護者と校長や管理職がフランクに懇談できる機会を定期的に設けて、各自が気になっていることを自由に言ってもらえるようにすれば、そこで語られたことは『みんなの課題』となり、誰が対応してもよいことになる。学校が抱える課題を、職員室の中だけで悩む必要はありません。保護者や地域の人々に開かれた学校にすることで、結果的に教員の負担を減らせるはずです」

開かれた学校を実現するために、福本氏は神戸市の公立学校の校長を集めた場で「あなたたちが変わらなければ神戸市の教育は変わらない」というメッセージを発信。校長のリーダーシップの下で各学校が改革に取り組むことの重要性を伝えたという。

「現役の校長の中には、私が中学校で校長を務めていた当時のPTA改革などの取り組みを知っている人も多い。単独でいろいろなことを変えてきた教員出身の私が教育長になったので、『あの先輩が言うならやるしかないか』『自分もやれるかな』と思ってもらいやすい面もあるのではないでしょうか。今後も校長1人ひとりの挑戦を否定せずに支援することで、各校の取り組みを後押ししていきたいと考えています」

(文:安永美穂、写真:神戸市教育委員会提供)

関連記事
「PTA改革で注目の元校長『保護者なしに働き方改革は実現しない』と語る訳」

東洋経済education × ICT編集部

ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
キャリア・教育の人気記事