存在感増す「ビデオ判定」ジャッジ支える技術の今 ソニー、スポーツ観戦「もっと楽しく」の超進化

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「ライトなファンや若年層をファンとして取り込むことを目的としている。実際、若年層の視聴者が好きなアニメの世界観で、トラッキングのデータをもとにプレーの緻密な動きまで再現できるようになっている。アメリカの4大スポーツにおいても若年層の取り込みが大きな課題となっており、スポーツにエンタテインメント性を盛り込むことでファン拡大につなげようとしている」

スポーツのエンタメ活用
取得したデータを活用してリアルタイムでバーチャル化(写真:ソニー提供)

このようにソニーでは、データを使って、スポーツ放送だけでなく、新しいエンタテインメントとして、ゲーミフィケーションやシミュレーションなどにも領域を拡大しようとしている。

「そもそも私たちは、スポーツ中継を含む放送用機材の分野が強かったこともあり、次の柱として考えたのがスポーツだった。ソニーではテクノロジーで人々を感動させるエンタテインメント性を重視している。エンタテインメントの1つであるスポーツの世界を楽しんでもらうという観点から、当時クリケットなどを皮切りに活躍し始めていたホークアイに目を付け、そこから現在の事業へと拡大していった」

テクノロジーの進化で楽しみ方が多様に

テクノロジーの進化によって楽しみ方が増したスポーツ。今後、スポーツの世界の可能性はどのように拡大していくのだろうか。

「例えば、ビデオリプレイはどんなスポーツにも活用が可能で、トレーニング用途にも使える。トラッキングについては現状ラグビーなど人間が重なり合うスポーツでは難易度が高いが、これからAIが発展していくことで、さらに活用できる範囲は広がっていくと見ている」

審判の判定だけでなく、これからビジネスとして拡大が見込めるのが、コーチングやファンエンゲージメントの分野だ。

「トラッキングに関しては、野球ではまだ審判の判定に使われておらず、むしろデータをとって各チームに提供し、チーム強化のために、選手のコーチングやプレイの分析などに使われている。とくにコーチングで大事なのは本人が理解できるかどうか。今後さらにデータが集積していく中で、個人のアプリでも使えるようなサービスが出てくるかもしれない。一方、ファンエンゲージメントでは、先ほど紹介したアニメとのコラボが1つありますが、データを表現することで違う視点を見せられるもの、いわゆる、データコンテンツも私たちの目指すものだと考えている」

ファンエンゲージメント
スポーツチームのウェブサイトやアプリ、配信プラットフォームを開発したり(左)、3次元仮想空間にスタジアムを再現するなどファンに新たな映像体験やスポーツデータの楽しみ方を提供(右)している(写真:ソニー提供)

これからテクノロジーの進化によってスポーツの楽しみ方はどう変わっていくのだろうか。原氏はこう話す。

「スポーツの楽しみ方を日常と非日常に分けると、日常では、それぞれ個人が自分のバイオリズムに基づいて、自分の見たいタイミングでよいコンテンツが見られる環境をいかにつくっていくかが大事になってくるはず。そうしたパーソナライゼーションが1つのカギとなってくると思う」

國貞 文隆 ジャーナリスト

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くにさだ ふみたか / Fumitaka Kunisada

1971年生まれ。学習院大学経済学部卒業後、東洋経済新報社記者を経て、コンデナスト・ジャパンへ。『GQ』の編集者としてビジネス・政治記事等を担当。数多くの経営者に取材。明治、大正、昭和の実業家や企業の歴史にも詳しく、現代ベンチャー経営者の内実にも通じている。著書に『慶應の人脈力』『やはり、肉好きな男は出世する ニッポンの社長生態学』『社長の勉強法』『カリスマ社長の大失敗』がある。

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