子の虐待や貧困が懸念される「離婚後共同親権制度」、学校現場への影響も甚大 進路選択や特別支援、不登校対応なども混乱か
各種給付が受けられず「子どもの貧困」が進む懸念
共同親権となった場合、これまでひとり親に出されていた各種給付が受給できなくなることも懸念される。
例えば、高等学校の就学支援金は、保護者の収入に基づいて受給資格が認定されるが、「保護者=親権者」とされるため、共同親権下では両親の収入に基づいて判定が行われるという。DVなどで別居親に学費などの負担を求めることが困難と認められる場合は例外的に親権者一人で判定するとの答弁があったが、DVなどの立証責任は同居親が負うことになる。

ミモザの森法律事務所 代表弁護士
1994年弁護士登録。女性、子どもの権利、えん罪事件、環境訴訟など、国内外の人権問題に関わって活動。2006年、国境を越えて世界の人権問題に対処する日本発の国際人権NGO・ヒューマンライツ・ナウ(Human Rights Now)の発足に関わり、以後事務局長として国内外の深刻な人権問題の解決を求め、日々活動。2021年より副理事長。弁護士活動では、女性の権利をはじめとする法的問題の解決や、企業法務を専門分野として活動。日弁連両性の平等に関する委員会委員長、東京弁護士会両性の平等に関する委員会委員長を歴任。ジェンダー法学会理事、国際人権法学会理事、法学博士。著書に『人権は国境を越えて』(岩波ジュニア新書)など
(写真:本人提供)
しかし、そもそもDVの場合は共同親権にしてはならないと法は規定しており、そこからこぼれ落ちてしまった被害者、例えば「DVの証拠が示せなかった」「協議離婚で共同親権を余儀なくされた」「モラハラなどの被害に遭ってきた」といった被害者が立証責任を負うのは酷だ。DVはなかったという推定を覆す強力な証拠を提示できる例はまれだろう。その結果として、苦しむのは子どもである。
このほか、親の資力などが要件となっている各省庁の支援策については、各法令を所管する各府省庁が個別に検討する事柄だとして、法務省は国会で責任ある答弁をしないままだった。やむなく共同親権にした揚げ句、別居親が子の学費負担などに協力しない場合、ひとり親家庭は一層の窮地に立たされかねない。
このように共同親権制度を導入した結果、子どもやひとり親家庭の支援を受けられない事態が必然的に生じ、子どもがさらに貧困に陥る懸念がある。子の福祉という制度趣旨に基づき、給付減となる事態が起きぬよう、制度や運用の改革は必須だ。