「小学生の推し活」、親はどう向き合う?子どもの心にもたらされるメリット3つ 理解できなくても「好き」を発見した喜びを共有

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親のスタンスは監視でなく見守り、「何を推すかは自由に」

一方で気になるのが、推し活によるトラブルだ。

「浪費や同担拒否、自分の無力感などさまざまな形で『推し疲れ』をする人がいますが、これはまさに現実世界とのバランスが崩れて日常が侵食されたときでしょう。『たとえ推しが現実の存在であっても、推しがいるのは自分の生きる日常の生活圏ではない』、これを受け入れて線引きするのは大人でも難しいことがあります。日常生活で必要なお金を推し活に注ぎ込んで生活が蝕まれたり、推しを本気で好きになる “ガチ恋”や“リアコ”の状態も、自分の目の前にあるリアルな現実と、推しがいる非現実とのバランスが崩れているのです」

本来「プロジェクション」は、自分自身と、外部の対象とがあって、あくまで自分が主体で対象に働きかける活動だ。しかし「自分が楽しいから推し活をする」はずが、「自分は推し活をしていないと幸せになれない」と逆転してしまうこともあるのだという。

「楽しいはずの推し活を、なぜか『苦しい、つらい』と感じるのであれば、それはバランスが崩れている証拠。非日常で得られる快楽を求めるあまり現実世界が侵食されるというのは、ギャンブル依存と同じ心理状態です。この状態に陥らないよう、親は子どもの推し活の状況を知っておくとよいでしょう」

とはいえ、生活全般の教育と特段変える必要はない。例えば、推し活がお小遣いの範囲を超えていれば、家庭の金銭感覚や方針に従って話し合いをしたり、SNSで知らない人とつながるリスクを伝えるなどして見守れば十分なはずだという。一方で久保氏は、「子どもが推している対象については自由にさせて」と続ける。親が子どもの推す対象を選別してしまうのは、好ましくないようだ。

「親も嫌いなものや苦手なものがあって当然なので、子どもが推しているものを無理に受け入れる必要はありません。ただ『そんなものを推すのはダメ』と否定することは、子どもの『自分らしさ』を否定することと同じです。自ら何かを好きになるのは、とても素敵で尊いことです。まずはその心の動きを肯定し、一緒に喜んであげてください」

親の自分が知らないものに熱中する子どもの姿は、頼もしくもあり、また心配でもあるだろう。久保氏は、「監視ではなく見守る。理解するのではなく認める。お金や時間の使い方など気になることがあるときにだけ、各家庭の方針に沿って介入してあげてほしいです」と話す。「これの何がいいの?」と口を出したくなるのをグっとこらえ、推しに情熱を傾ける子どもをほどよい距離からサポートしたいものだ。

(文:藤堂真衣・編集部 田堂友香子、 注記のない写真:Rhetorica / PIXTA)

東洋経済education × ICT編集部

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小学校・中学校・高校・大学等の学校教育に関するニュースや課題のほか連載などを通じて教育現場の今をわかりやすくお伝えします。

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