精神科医に聞く「受験生のメンタルケア」、子どもを追い詰めない声かけとは SOSサインに気づき、正しく対処するために

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子どもたちを守るには教員がすべて抱えないこと

――受験生のメンタルケアに関して、教員のみなさんはどんなスタンスでいるのがいいのでしょうか。

一林大基(いちばやし・たいき)
SNSでは「バーチャル精神科医いっちー」として発信を行っている
はじめのメンタルクリニック院長、精神保健指定医、日本精神神経学会 専門医
昭和大学附属烏山病院精神科救急病棟に勤務後、はじめのメンタルクリニックを開業。精神科医いっちーとしてSNSなどを通じて10〜20代に情報発信と支援を行っている。著書に『頭んなか「メンヘラなとき」があります』(ダイヤモンド社)など
(画像:本人提供)

これは難しい問題ですね。ご自身がオーバーワークなどでメンタルヘルスに問題を抱えている先生も多いですから。

教壇に立って、宿題を見て、事務作業もして、部活の顧問として土日も働いていたら、それは調子を崩してしまうでしょう。先生がすべてこなすのは無理だということを前提に考えるべきです。

一人ひとりの子どもに対し、毎日時間を取って傾聴するというのは物理的にも不可能なこと。あくまでもできる範囲でやる、と割り切らなければ先生自身のメンタルを守れなくなりますし、結果的に子どもたちを守れなくなってしまいます。

学校にいる間に子どもたちと話せるようであれば話し、あとは親に情報共有する、あるいはスクールカウンセラーと連携するなどして、自分だけで抱え込まないようにするのがいいでしょう。

――メンタルヘルスが気になる子がいた場合、教員から保護者やスクールカウンセラーにうまく情報共有する方法はありますか。

メモを取ることです。私たち医者は毎日何百人もの患者さんを診るので、一人ひとりの細かい情報を覚えておくことができません。それは先生も同じではないでしょうか。何をどこまで話したか、メモを取って生徒のカルテを作るような感覚で文章化すると、変化に気づきやすくなりますし、「ここまでやった」という実感が持てるので先生のメンタルも安定します。

ポジティブにもネガティブにも寄りすぎない

――「つねにポジティブでいなければならない、ネガティブな気持ちになってはいけない」と考える人もいますが、長い受験期間では心をどう保つのがいいのでしょうか。

ポジティブに寄りすぎても、ネガティブに寄りすぎてもよくありません。受験は長距離走ですから、「4月の模試でよかったからもう大丈夫」というわけではありませんよね。大切なのは客観視すること。しかし、受験を控えた本人が俯瞰して物事を見るのはなかなか難しいもの。だからこそ、親や先生がそういう視点を持って接することをおすすめします。

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