中学受験で「コスパ」を連呼する親に欠ける視点、子を塾漬けにしない意識とは 10代の子どもから多くの「時間」を奪う危険性
そのため、中学受験に臨む子どもたちの大半は、中学受験を専門に指導する進学塾に通い、何年もかけて学習に打ち込む。入試で出題される主要教科のどれもが、大人が取り組んでも難解に感じられる問題だ。早期のうちにこれらの基盤を構築することは、その後の学びに好影響を及ぼすことが多いし、何より「ゴールデンエイジ」と形容されるほど知識の吸収力に優れた小学生時代に中学受験勉強に励むことは、大きな意義があると考えている。
一方で特に5年生・6年生の2年間は、「塾通い」が生活のメインになる。何かに一意専心することは、何かを捨てなければならないことの裏返し。友人と遊びに出かけたり、習い事に打ち込んだり、趣味やスポーツに没頭したりという時間が奪われてしまうのはたしかだ。
ティーンエイジを「塾漬け」にしないために大切なこと
異論はあるだろうが、わたしの考えは次の通りだ。わが子に中学受験を選択させるなら、保護者は「たとえ第1志望校ではなかったとしても、どこかの中高一貫校に進学させる」という覚悟を持つべきである。中学受験では、6年生時点での学力状況を冷静に捉えて『挑戦校』『実力相応校』『安全校』を組み合わせて受験すれば、どこにも受からないことはない。そこで、合格が確実だと思われる『安全校』であっても、進学先の候補の学校にすべきということだ。
私は塾講師だが、決して「全員合格をうたいたいから」という我田引水の価値観で申しているのではない。先ほども言及したが、中学受験は子どもたちの時間を奪うものだ。「このレベルの学校でなければ通う価値がない」と保護者が判断して地元の公立中学校に通い、高校受験でリベンジを目指すとなれば、中学入学後またすぐに塾通いをしなければならない。
さらに「大学はこのレベルでなければ進学する意味がない」と、高校入学後もまた予備校に通うことになる……。こうした保護者の思考には、「中高一貫校はすでに先取り学習をしているから、追いつかなければ」という焦りがある。
お気づきだろうが、これではわが子のティーンエイジは「塾漬け」になってしまうのである。塾講師の私が口にするのはおかしいかもしれないが、この時期に受験勉強以外に一意専心する機会を失ってしまうのは「不幸」ではないか。
この事態を回避するには、繰り返しになるが、中学受験をするならどこかの中高一貫校に進学させると腹をくくったほうがよいと考えている。さらに個人的には、受験勉強がさほどハードではない小学校4年生以前なのであれば、中学受験をやめて高校受験にルート変更してもよいと考えている。