医学部受験の現実、親子関係や「入試成績と医学部成績に相関なし」の内実 18歳で将来の勤務地決める「地域枠」にも賛否

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少子化で受験生が減少しているとはいえ、今なお狭き門である医学部進学。合否は本人の努力のみならず、予備校選びや入試情報の収集、心身のサポート、そして学費の面から家族の団体戦とされる一面もある。一方、地域医療の格差問題や専門医制度など医師となってからのキャリアにかかわる知識も欠かせない。医学部を志望する前から持つべき医学部受験の知識と課題とは。

医学部受験生の「心を折る」親の行き過ぎた期待

⾼梨 裕介(たかなし・ゆうすけ)
医学部予備校ACE Academy 運営・講師/ 医師、株式会社DELF代表取締役
⼤阪医科⼤学卒 / 医師免許取得 / 初期臨床研修修了。医学部受験バイブル運営・執筆。中学受験にて最難関の灘、東大寺学園、洛南、洛星中学に合格。高校時代は英数国にて全国模試10位以内。もともと文系から理転し現役で医学部に合格。エースアカデミーにて450名以上の医学部合格者を輩出
(写真は本人提供)

医学部受験のハードルとしてまず思い当たるのが学力試験だ。国公立大学の場合、5教科7科目の大学入学共通テストで8割以上の得点が求められ、二次試験でも学科試験が課されることが多い(前期日程の場合)。私立の一般選抜は数学、理科、英語が一般的だが、ここでも高い学力が求められる。大学全入時代でも医学部受験は「浪人もやむなし」の別世界。保護者の教育熱はヒートアップしがちだ。

医学部専門予備校エースアカデミーを主宰する⾼梨裕介氏は、医学部受験をする家庭の保護者が陥りがちな思考についてこう指摘する。

「『厳しく管理して勉強させないといけない』という思い込みを持つ保護者が一定数います。ノートを予備校でチェックしてほしいとか、勉強しているか監視してほしいと言う親も珍しくありません。

しかし私としては、こうした思考は間違っていると思います。チェックのためにノートをきれいに作ることばかりに目が向いてしまうのでは意味がないですし、監視されないと勉強できないのでは自己管理しながら勉強を進めていくことができません」

高梨氏が受験生と面談すると、「しんどい」と深刻に悩んでいる相談のうち6〜7割が親子関係だという。子どもへの過剰なプレッシャーは親が医師であるかどうかでも違うのだろうか。

「親が医師の場合、自分の受験体験をそのまま子どもに押し付けることがあります。自分は英語を3日で覚えられたからできるはず、とか、自分は国立医大出身だから私大は認められない、などです。極端な例ですが、学費や受験料の計算、出願手続きの一切を“自分でやれ、甘えるな”という保護者がいました。必要なところで親の理解やサポートを得られず、結局その子は12月にメンタルが崩壊し退塾してしまいました」

一方、親が医師ではない場合は勝手がわからず「医学部に行くには勉強がパーフェクトでなければならない」という誤った意識のもと、子の成績に過度に干渉してしまうケースがあるそうだ。成果が出ないと問題集を捨てられたり、自立のためと食事の支度をしてくれなくなったり、教育虐待とも取れる事例もあるようだが、ふたを開けると親も「しんどい」のだと高梨氏は指摘する。

「保護者面談で、親が泣き出すケースもあります。親も善意で何とかしてあげたいという思いなのですが、中学受験以来の『褒めたり甘やかしたりしてはいけない』『厳しくしなければ』という価値観が抜けず、悪循環に陥っているのでしょう。

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