医学部受験の現実、親子関係や「入試成績と医学部成績に相関なし」の内実 18歳で将来の勤務地決める「地域枠」にも賛否

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受験生には、親はあなたを応援する思いが強すぎるあまり“厄介なファン”になっていること、そして親を変えるのは難しいことを説明し、親に流されず自分を見失わないようにとアドバイスしています。とはいえ、親子は毎日顔を合わせるので、子どもは逃げ場がありません。予備校として、親子の間に立ってお子さんのサポートもできればと思っています」

医学部特有の「地域枠選抜」のメリットとデメリット

医学部進学のもう一つの壁が学費だ。国立大学6年間で約350万、私大となれば2000万円以上が一般的だ。医学部に通わせられるのは富裕層だけ――。こんな声も聞かれるが、実際はどうなのだろうか。

「予備校に通う塾生に限って言えば、やはり世帯収入が高い家庭が多いです。でも、収入が高くないから医学部に進学できないかといえばそうではありません。むしろ、情報の地域格差のほうが大きいように思います。都市部には、医学部専門の予備校もありますし、学校や友達に感化されて医学部を目指す子もいます。ですが地方は、大手予備校はあっても医学部専門は少ない。すると、スタートラインの情報収集から差がついてしまいます。正直、医学部の合格可能性は都市部の受験生と比べてまったく遜色ないのです」

近年は、総合型選抜や指定校推薦などの推薦入試による多様な入学の道も拓けてきた。さらに医学部受験には「地域枠選抜」と呼ばれる独特の入試がある。

地域枠選抜とは医師偏在の解消を目的に2010年に導入された制度で、医学部卒業後、特定の地域や診療科で診察を行うことなどを条件とするもの。9年間は指定勤務をしなければならないが、一般入試に比べて倍率や合格最低点が下がるうえ、奨学金の貸与・支給もある。

「学校の先生や親は、入りやすいからと地域枠を勧めがちです。でも私は、医師のキャリア形成の面で、地域枠には問題が多いと感じます。受験に必死な18歳を餌で釣り、30代までの働き方を縛るようなものだからです。

とくにここ数年で、地域枠の縛りから“離脱”した際のペナルティが追加されています。奨学金を上乗せして返済しなければならない、専門医資格が取れなくなる、さらには離脱者を採用した病院には補助金を減額するなど間接的なペナルティも見受けられます。このように、後出しで条件が変更される可能性もあるので、しっかり情報収集をして制度を理解したうえで受験してほしいです」(高梨氏)

医師にも求められる文系の素養や社会常識

永井 秀雄(ながい・ひでお)
茨城県立中央病院名誉院長、練馬光が丘病院副管理者、自治医科大学名誉教授、神栖市若手医師きらっせプロジェクト コーディネーター
埼玉県生まれ。東京大学医学部卒業。ドイツ・ヴュルツブルク大学外科留学。専門は消化器外科・内視鏡外科。手術は4000件以上担当した。患者さんに寄り添う医療を心がけ緩和ケアにも関心を持つ。外科医を続ける一方、地域医療・医療教育・がん対策に関わってきた。とくに医療を受ける側への医療教育や学校でのがん教育の重要性を指摘してきた。患者さんやその家族、一般市民も医療に参画する「参療」を提唱し、全員参加型の医療を目指している
(写真は本人提供)

そもそも医師になる、というのは医学部に合格して終わりではない。6年次に医師国家試験に合格した後、研修医として2年間の初期研修、さらに専門医となるための数年間の後期研修があり、大学入試の学力だけで乗り切れる世界ではない。

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