5月以降の米国株は意外に底堅く推移しそうだ インフレや長期金利上昇懸念はどこまで深刻か

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もう1つ、アメリカの債券市場で金利上昇要因として意識されているのは、同国の財政だ。大幅な財政赤字による景気刺激策によって今後も高インフレが定着、これが金利上昇要因になる点だろう。

政府の財政赤字拡大は前トランプ政権から始まったが、バイデン政権となってからも大幅な財政赤字が続いている。11月5日の大統領選挙でどちらが勝利しても、財政政策が緊縮方向に転換する可能性は高くない。こうした債務拡大・財政悪化による「財政プレミアム」が高金利・高インフレを定着させるシナリオへの懸念は、今後も簡単には払拭されないだろう。

量的引き締めのペース減速も長期金利抑制要因に

ただ、一方でアメリカ連邦政府の財政赤字は、経済成長の上振れによって税収が増加したこともあり、2024年に入ってからは若干改善が見られる。2023年半ばに連邦政府の財政赤字はGDP比で約8%まで拡大した。

だが、バイデン政権によるインフレ抑制法(2022年8月成立)でやや拡張財政が和らいだ結果、2024年3月には6%前後まで改善している。現在の財政赤字についての評価はさまざまだが、筆者は同国の財政赤字は持続不可能な状況に陥っていないと考えている。

また、5月1日に結果が判明するFOMC(連邦公開市場委員会)では、政策金利の据え置きが確実視されているが、2022年6月に開始された量的引き締め(QT)のペース減速が決まる可能性が高い。QTのペース減速はすでに市場に織り込まれているが、FRBの引き締めペースの変更はアメリカ国債市場の需給を改善させ、長期金利上昇を抑制する要因になりうる。

2023年10月に起きた国債市場の急落は、パニック的な「売りが売りを呼ぶ」という色彩が強い金利上昇を伴ってのものであり、当時は国債市場参加者がかなり近視眼的になっていた。このときの記憶が新しい中で、今後金利上昇局面が訪れたとしても、債券市場参加者は冷静に対処するのではないか。であれば、「インフレ懸念」に対して以前よりも冷静になっている同国の株式市場は、堅調な企業業績を材料に、年後半は底堅く推移するだろう。

(本稿で示された内容や意見は筆者個人によるもので、所属する機関の見解を示すものではありません。当記事は「会社四季報オンライン」にも掲載しています)

村上 尚己 エコノミスト

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むらかみ なおき / Naoki Murakami

アセットマネジメントOne株式会社 シニアエコノミスト。東京大学経済学部卒業。シンクタンク、外資証券、資産運用会社で国内外の経済・金融市場の分析に従事。2003年からゴールドマン・サックス証券でエコノミストとして日本経済の予測全般を担当、2008年マネックス証券 チーフエコノミスト、2014年アライアンスバーンスタン マーケットストラテジスト。2019年4月から現職。

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