優しいのがよい教師?ほめて伸ばす時代にあるべき「上級の叱り」の4ステップ 「子どもに嫌われたくない」を理由に逃げないで
このような指導は、あからさまに厳しい態度で臨む状況に至らせないための叱り指導方法であると言うことができます。「叱っていない」のではなく「叱られたと感じさせない」指導のことであり、「上級の叱り」の類の指導方法とも言えるものです。
もし、経験も指導力も未熟な若い教師が、表面的な言葉だけを捉えて、「叱らなくても指導ができる」「叱って指導してはいけない」などと勘違いしてしまえば、必要な時に的確な叱りができない教師になってしまうおそれがあります。
「叱らない指導」「ぶつからない指導」とは、叱り技術に長けた名人級の教師が、長年の経験と研究によって身に付けた「叱り指導法」であって、決して叱ることを否定した指導方法ではないと、私は解釈しています。
とくに、集団生活のきまりを教え、生活習慣の基礎を教える小学校では、子どもを叱らないで指導することなど考えられません。叱ることで子どもを教え導くことは、時代が流れ、子どもたちを取りまく社会状況が変化し、人々の価値観が変化しても、変わることはありません。
今の時代に合う「叱り力」とは
現在の教師には、現在の子どもや社会に応じた叱り方を身に付ける必要があります。教師の感情を子どもにぶつけるような旧態依然の叱り方は通用しません。そこで私は次のような「叱りの4ステップ」を提唱しています。
まず、なぜ叱られるのか、子どもに気づかせるようにします。「何が悪いと思う?」「なぜ、叱られるの?」などと問いかけることによって、子どもに自分自身の不足に気づかせることから始めます。
2. 納得させる
自分の過ちや不足に気づかせることで、「自分が間違っていた」「先生から叱られるのは当然」と納得して叱りを受け入れる姿勢にすることが可能になります。
3. 反省させる
自分の行いに対して納得して叱られることにより、子どもは心から反省することができるようになります。
4. 改善させる
教師の叱りを受け入れて反省するからこそ、自分の行いを改善する心がけが生まれます。
教師も人間ですから、子どもの言動に感情を刺激されてしまいます。それで、いきなり反省を求めるような叱り方をしてしまうことがあります。ひと昔前までは、それで十分効果があったのかもしれません。しかし、ハラスメント防止が叫ばれ、教師に対する世間の目も厳しくなっている今日では、そのような叱り方は通用しません。
いきなり教師から「反省しなさい」と押し付けられるような叱り方をされれば、子どもは納得できないままです。自分の行いに対して反省するどころか、教師の指導に対して不満と不信を抱いてしまいます。
今の時代には、子どもに自分と向き合って考えさせ、心から反省することができるように導くような叱り方が必要です。子どもだけでなく後ろにいる親も納得させることができるような叱り方が、これからの時代に必要不可欠な教師の力量になるでしょう。
(注記のない写真:mits / PIXTA)
執筆:奈良県公立小学校 校長 中嶋郁雄
東洋経済education × ICT編集部
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