「結成1年目で全国大会」の吹奏楽団が提案、部活動地域移行の成功握るカギは 吹奏楽文化を消滅させないための地域のあり方
石田氏は地域移行の「改革推進期間」を「猶予期間」と見る。
「地域で吹奏楽を行う場合、学校で活動を行うよりも遠い場所まで移動しなければならなかったり、活動費がかかったりと、保護者や子どもの負担が大きくなるケースもあります。学校で活動が許される間は、子どもたちには学校にとどまって練習してほしいので、中学生高校生については、『学校の部活動が存在している限りはそちらで活動してください』とお話ししています」
吹奏楽は、今後も学校での活動が継続されるのか。それとも地域クラブとしての活動になるのか。「改革推進期間の終わる2026年4月には、一部の強豪校を除いて、ほとんどの中学校で吹奏楽部も地域移行するでしょう」と石田氏は見る。
吹奏楽部の生徒数が少なく、また教員も人手不足となっている学校については、そうした学校で集まりエリア全体で活動することによって、他校のリソースを共有し合えるなど、地域移行のメリットが大きい。
一方で生徒数も多く、自らやりがいを持って指導にあたる先生がいるような強豪校については、地域移行から受けるメリットが少なく、むしろこれまで紡がれてきた文化や運営のノウハウが途絶えてしまうリスクもある。各自治体は地域移行を一律ではなく、それぞれの学校の状況やエリア全体の状況を見極めながら推進する必要がある。
指導者を育て、アメーバのようにバンドを増やす
現在、同楽団は開智国際大学の学生約60名、社会人あるいは他大学の学生約60名の120名前後で活動している。今後、部活動移行の推進期間が終わり、中学生を受け入れる場合、どのような体制を考えているのか。
「以前高校で教えていた時の経験からすると、やはり1人ひとりの個性を把握して指導するうえでは、一団体60名から70名程度が理想です。私は吹奏楽部活動指導員認定講習(主催:一般社団法人日本管打・吹奏楽学会)の講師も務めていますが、いま開智アカデミックでは、社会人メンバーで指導員の認定を受けている人が何人かいます。そうした人たちが次の指導者となって、1つのオーケストラでなく、アメーバのようにここから派生してバンドを増やしていきたいと考えています」
一般社団法人を立ち上げ、そこに所属してもらい指導者を派遣していく仕組みなども整えたいと語る石田氏。開知アカデミックはまだアメーバのように分かれる段階には至っていないが、すでに市内の別の楽団の新規立ち上げを支援するなどしているという。
「先日も、市内のある小学校からスピンアウトした吹奏楽団の立ち上げに少々携わりました。開智アカデミックに所属している指導員の資格を持った方に、学生とともに指導に行ってもらいました」