残業80時間→定時退勤へ、自己犠牲をやめた教員の「トータルウィンな時短術」 なぜ「長時間労働が正解」の意識を抜け出せた?

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職員室や保護者対応で取り組んだ効率化とは?

職員室では、必要な資料は教職員がいつでもアクセスできるようPDF化してウェブ上で共有するよう提案して実現したほか、会議進行の時間も意識するようにしている。

「職員会議の延長をよしとする雰囲気をつくらないように、自身が司会のときは『残り5分です』、別の先生が司会のときは『時間も迫っているので、管理職から一言お願いします』と声をかけるようにしています。丸つけの速度を上げるなど個人レベルで1分単位の時短に日々努めても、会議が5分延びれば時間の節約は台無しになります。教職員1人ひとりに時給が発生していると考え、時間内に終わらせることは大切ではないでしょうか」

また、保護者とのやり取りも効率化した。子どもが欠席する際、朝の限られた時間に保護者が学校へ電話連絡するのは負担が大きいと考え、Google Forms(現在はアプリでの出欠連絡に移行)で出欠確認をできるようにしたのだ。

「ただ、悩み相談などはいつでも連絡していただければと思いますし、学校で何かあったときはすぐに保護者に連絡するようにしています。後で大きな問題になって多大な時間がかかることもあるので、早めの対応が双方の安心につながると考えています」

「新年度が始まる4月」にやっておきたいこと

新年度が始まる4月にやっておくとよいことについても教えてもらった。例えば、タブレット端末での児童氏名の辞書登録は、打ち間違いの防止とともにかなりの時短効果があるので、全教員にやってほしいという。児童の名前のラベルシールづくりやファイル整理、チェック用の名簿づくりなどの事務作業も最初にやっておきたい。

そのほか、教職員同士で当番表などの必要なデータを共有することも有効だという。

「重要なのは、仕事を進めやすくするために見通しを持つこと。例えば、私は特別活動主任なので、ガントチャートで予定表を作ってファイル共有しています。子どものよいところをタブレット端末でメモする習慣をつけ、そのメモを教員同士で共有するのもお勧めです。ほかの先生が授業をするときに役立ちますし、自分も気づけていなかった子どもたちの成長を知ることができ、所見の作成や保護者との面談の際に役立ちます」

今、教育現場では働き方改革を進めるため「当たり前」の見直しに取り組む学校も出てきているが、日野氏は次のように考えを述べる。

「すぐにできる見直しとしては、プリントの配布。データ化できるものや配布が不要なものなど仕訳ができる部分は多い。また、会計処理は、教師の手から離す必要があるでしょう。研究授業も負担に感じている教師は多く、回数を減らす、あるいは指導案の形式を簡略化するなど、新しいあり方があるのではないかと思っています。一方、教員の労働時間の課題はありますが、宿泊行事や野外活動は残すべきでしょう。学校だからできることで、子どもたちにとっても思い出になるからです。給食も、食育や貧困・格差問題の面からもなくすべきものではないと思います」

最後に新年度の多忙な時期を迎えることに不安を抱いている若手教員に次のようなメッセージをくれた。

「なぜ自分が先生になりたいと思ったのか、改めて振り返ってみてほしいです。多くの方がすばらしい志を持っていたはず。教師の働き方が大きく変わっていく過渡期だと思うので、自分が目指していたことを今断念してしまうのはもったいない。不安を共有し合い、安心できる職場を皆でつくっていきたいと思っています」

(文:國貞文隆、編集部 佐藤ちひろ、写真:日野勝氏提供)

東洋経済education × ICT編集部

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小学校・中学校・高校・大学等の学校教育に関するニュースや課題のほか連載などを通じて教育現場の今をわかりやすくお伝えします。

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