[Book Review 今週のラインナップ]
・『消えた核科学者 北朝鮮の核開発と拉致』
・『ハッキング思考 強者はいかにしてルールを歪めるのか、それを正すにはどうしたらいいのか』
・『ビジネスエリートが知っている 教養としての発酵』
・『夜行列車盛衰史 ブルートレインから歴史を彩った名列車まで』
評者・書評家 印南敦史
北朝鮮が日本人拉致を認めてから二十数年。しかし拉致問題は依然進展せず、そもそも北朝鮮が日本人を拉致した“理由”はいまだ不明瞭なままである。だからなおさら、衝撃を感じた。北朝鮮は、長らく日本の原子力開発に狙いを定めていた可能性が高いというのだから。
プルトニウム製造係長の失踪 丹念な取材が明らかにする事実
「動力炉・核燃料開発事業団」(旧動燃、現・日本原子力研究開発機構)が発足したのは1967年で、1期生の若者たちは、原子力の未来を担う期待の星だった。ところがそれから数十年を経た2011年夏、朝日新聞の記者として東京電力福島第一原発事故後の原発のあり方を取材していた著者は、当時の動燃関係者から意外な事実を知らされる。
曰(いわ)く、「旧動燃1期生」だったかつての上司、プルトニウム製造係長を務めていた竹村達也という人物が、72年に突然、東海村にあった動燃独身寮から失踪したというのだ。しかも、続いて聞こえてきたのは「竹村さんは、北朝鮮に拉致されたかもしれないんだ」という言葉だった。
この記事は会員限定です。登録すると続きをお読み頂けます。
登録は簡単3ステップ
東洋経済のオリジナル記事1,000本以上が読み放題
おすすめ情報をメルマガでお届け