教職員「精神疾患で休職」が過去最多の6539人、学校と企業の決定的な違い 「心を病んでいる人」はもっと多い可能性も

ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

「期待したいのは、文科省の積極的なコミットメントです。文科省にはメンタルヘルス対策の専門家も配置されていますが、効果的な対策を講ずる予算がつかない。財務省がしっかりした予算確保をすれば、すでにメンタルヘルス対策の仕組みは現場で徹底されているはずです。昔と比べ、発達障害の子も増えており、学校の負担は増える一方です。ほかの職種と比べても仕事の過重は大きく、学生からはブラックな職場だと認識され、優秀な学生が志望しなくなっている側面も否定できません」

同社では現在、文科省の調査研究事業の一環として、神戸市教育委員会と那覇市教育委員会、千葉市教育委員会からオファーを受け、教職員のメンタルヘルス対策を100%子会社のAvenirを通じてサポートしている。

「メンタルヘルス関連では、アンケートを実施して回答を得るにも信頼が欠かせません。学校を1つひとつ回り説明をして回答率を上げながら、校長先生にはメンタルヘルスに関するマネジメントやリーダーシップの研修を行っています」

教育委員会によって精神疾患による休職数や、その原因また対策はさまざまだが、共通した課題もあるという。

「例えば復職関連ですと、ほとんどの学校がそもそも対策をとっていないか、やっていたとしても校長先生がすべて対応することになっています。しかし、現実的に考えれば、毎月学校のトップと面談するのは休職者にとってはハードルが高い。たしかに校長先生が定期的に状況を把握しておく必要はありますが、本来は医療職が対応しなければならないことで、その説得にも時間がかかりました。まずマネジメント層が意識改革を行うことが重要であり、企業と同じように精神疾患を抱える先生が相談しやすい体制をつくることが急務となっています」

今も増え続けている教職員の精神疾患。今後、同社はさらに教育界でのメンタルヘルス対策を強化する方針だ。

「働き方改革によって、多くの企業でメンタルヘルス対策が進み始めたことはよいことだと考えています。しかし、その一方で、働き方改革が進んでいない医療業界、建材・運輸業界では人手不足が常態化しています。いわゆるホワイト化に対応できない業種は将来的な生き残りも厳しい。教職員も同じくこれから何らかの手を打たなければなりません。休職率が2~3%あれば、組織に問題があると見なさなければならない。今回の調査研究事業をきっかけに、もっとメンタルヘルス対策を全国の学校に広めていきたいと考えています」

現在、学校現場はどこも人手不足で苦境に立たされている。なり手不足の解消に教育委員会も奔走しているが、今現場で働いている教職員を大切にすること、その1つがメンタルヘルス対策であり、何よりも先んじて取り組むべきことではないだろうか。

(文:國貞文隆、注記のない写真:Ushico / PIXTA)

関連記事
【前編】「抗不安薬を飲んで学校に」、精神疾患で休職の教員が増えている訳
【後編】校長の負担が大きい、「精神疾患で休職の教員」対応に見る学校の課題

東洋経済education × ICT編集部

東洋経済education × ICT

小学校・中学校・高校・大学等の学校教育に関するニュースや課題のほか連載などを通じて教育現場の今をわかりやすくお伝えします。

この著者の記事一覧はこちら
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
キャリア・教育の人気記事