君津市がスクールバス活用法を探る訳「文部科学省の補助金は5年で終了」 君津市の挑戦、試行錯誤に「制度上の壁」も…

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全国的に学校の統合が進み、子どもたちの通学のためにスクールバスを導入する自治体が増え続けている。文部科学省によると、新潟県や山形県、青森県、北海道や鳥取県といった雪の多いエリアなどでは、実に9割の自治体がスクールバスを運行しているという(※)。少子化とともに高齢化も深刻な地域では、スクールバスと路線バスの併用などの策を講じる市町村も多い。そんな中、千葉県君津市が「二毛作」の妙案を打ち出した。小中学校のスクールバスの空き時間を公共交通機関としても活用する「こいっとバス」について取材した。
※「国内におけるスクールバス活用状況等調査報告」2008年3月文部科学省

南関東で突出する、千葉県のスクールバス導入率

少子高齢化が止まらない日本。とくに山間部や過疎地域では学校数の減少とともに子どもたちの通学距離が長くなり、スクールバスを導入する自治体が増加した。一方で東京都、神奈川県と埼玉県は全国平均に比べてもこの割合が低く、3割程度にとどまっている。

そんな関東南部において、スクールバス導入率がぐっと高いのが千葉県だ。専用バスや路線バス併用など、何らかの形でスクールバスを導入している自治体は、県内の半数を超えている。

房総半島の南部に位置する君津市でも、2016年度から小中学校の再編に着手した。以降、現在までに学校数を28から19に減らし、うち5つの小中学校でスクールバスによる送迎を実施している。君津市企画政策部企画調整課で副主査を務める茅野和佳子氏は、市の状況を次のように語る。

「君津市は市域が広く、学校の統廃合が進んだことでスクールバスは欠かせないものになりました。民間委託により子どもたちの送迎は問題なく行われていましたが、市民や議会から、『朝と夕方の送迎時以外、スクールバスの車両が空いているのはもったいないのではないか。有効に活用することはできないか』という声が上がりました。そこで試験的にではありますが、スクールバスの空き時間を利用したデマンドバスを運行することにしたのです」

デマンドバスとは、利用者の乗車日時やエリアに合わせて運行する予約制のバスのこと。2022年8月から今年の3月末までを実証期間とし、市中央部の小糸地区にある周東(すとう)中学校のスクールバスによる日中の運行を開始。地区名にちなんで「こいっとバス」と名付けて周知を図った。

小糸地区は市内で初めてスクールバスが導入された場所でもあり、「交通空白地域」が存在するエリアでもある。市民の声に応える形で、全国的にも例のない試みを開始した君津市。市内外からの期待も大きく、いくつもの取材や他自治体からの視察も受けた。だが茅野氏は「いざ始めてみたら、なかなか期待どおりにはいきませんでした」と言う。

「こいっとバス」のさらなる活用を阻む「制度上の壁」

「こいっとバス」の運行は週3日。午前9時から午後3時の間で、市民は自分が乗りたい日時の1週間前から30分前までに電話で予約をする。乗降場所は、路線バスの停留所の間隙を埋めながら60カ所が設定された。地域の高齢者からは「生活の足に困っている」という声が上がっていたため、こいっとバスはその解決に一役買うと思われていた。だが、利用者数は市の想定ほどは伸びなかった。茅野氏はいくつかの課題を挙げる。

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