君津市がスクールバス活用法を探る訳「文部科学省の補助金は5年で終了」 君津市の挑戦、試行錯誤に「制度上の壁」も…
もともとマイカー利用者が多いという地域性もある。君津市では免許返納者に公共交通機関の利用チケットを配布しているが、そのチケットでこいっとバスにも乗れるようにした。デマンドバスという仕組みも耳慣れないものかもしれないが、人口減少が進む日本では避けて通れない運行方法といえるだろう。地道な取り組みと市民の声に耳を傾けたことによって、明るい兆しも見えてきている。
「この10月から2024年の1月まで、要望の多かった点を改善して再び実証運行を行っています。運賃はコミュニティバスに負けない200円に下げ、週末も走ってほしいという声に応えて土曜も運行しています。乗降場所も69カ所に増やし、さらなる周知に努めています」
その甲斐あって、10月末の土曜に小糸公民館で開催した地区文化祭では、のべ23人の市民がこいっとバスで会場を訪れた。
「90代の方が5、6人で文化祭に参加して、『このバスがなかったら来られなかったよ』と言ってくれました。この文化祭の日をきっかけにリピーターになった人も多いようで、利用を呼びかけることの大切さを実感しました」
だが来年1月以降の運用は継続も含めて未定だ。茅野氏は、現状とは異なる方策の可能性も模索していると続ける。
「スクールバスの補助金がなくなったあとは、通学の機能は持たせながら、もっと自由度を上げることもできるかもしれません。いずれにしても、さらなる少子化と高齢化は必ず向き合わなければならない問題。地域ごとの路線の再編についてはつねに考えていく必要があると思います」
広い市域、タテ割り行政、人や生活を変えることの難しさ――。君津市はさまざまな課題を経験した。ほかの自治体から視察を受けたことについて、茅野氏は「見に来てくれた人は、このやり方にはいろいろ難しいこともありそうだ、という感想を得て帰ることになってしまったかもしれません。でもそれも、君津市が実際にやってみたからわかることです」と頷く。
初めての取り組みに挑戦したことには大きな意義があり、手をこまぬいていればやがて地域の教育も破綻してしまう。避けられない人口減少が待っている以上、現場は試行錯誤を続けるしかない。
(文:鈴木絢子、注記のない写真:Toxi / PIXTA)
東洋経済education × ICT編集部
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