君津市がスクールバス活用法を探る訳「文部科学省の補助金は5年で終了」 君津市の挑戦、試行錯誤に「制度上の壁」も…
「車内でのアンケートなどで最初に寄せられた不満は『運賃が高い』ということです。既存のコミュニティバスは片道200円、高齢者なら100円で乗ることができる。それと比べると、片道500円という料金は高いと受け止められてしまったのでしょう。また、予約制であるという点も慣れるまではハードルに感じる方が多かったようです。しかし最も多かった要望は『家の前まで来てほしい』という声でした」
足腰が弱った高齢者にとっては、バスの乗降場所までの移動も一苦労だ。また、行きはよくても、買い物をして荷物が増えればやはりバスを降りてからの移動がネックになる。予約制という柔軟さを考えると、自宅の前まで行くことはさほどの難題でもなさそうに思えるが、そこには制度上の壁があった。
「周東中学校のスクールバスは14人乗りのコミューターなのですが、このサイズだと、定められた区域以外のドアツードア運行ができないという規則があります。ただしこれは地域の実情によって判断が異なるものですが、君津市が属する関東運輸局の千葉運輸支局ではこうしたルールになっています」

(写真:君津市提供)
また、こいっとバスの運行はスクールバスの委託先と同じ民間企業に任せたが、その契約締結においても制度の不自由さを反映することがあった。
「同じ会社に委託するからといって、単に契約時間を延長するようなわけにはいきません。スクールバスは文科省と教育委員会の管轄になりますが、市民が乗るための公共交通となると、国土交通省や運輸局の管轄になります。市での担当部署も異なるため、私たち企画政策部が別個の契約を締結しました」
そもそも「スクールバスの有効活用」が俎上に上がった背景には、文科省からの補助金が5年間で終了してしまうという事情があった。君津市では市全体で20台以上のスクールバスを運行しており、そのための予算は2億円を超える。周東中学校のスクールバスは2023年度いっぱいで補助金支給期間が満了することもあり、その先を見据えての施策だったというわけだ。少子高齢化対策が市の財政を圧迫する中、国の補助がなくなったあとの負担をどうするか。こいっとバスの実証運行は、未来への望みをかけた一手でもあったのだ。
「君津市が実際にやってみたからわかること」挑戦の意義は
懐事情を度外視するわけにもいかないが、茅野氏はこいっとバスについて「市民のための事業なので、必ずしも収支率だけがすべてではありません」と語る。それにしてももう少し使ってもらえないものかと思ってはいると言うが、有識者として招いた専門家には「新たな公共交通が人々の間に根付くには、最低でも2年はかかるもの」だと助言されているそうだ。