東芝・ソニーの中小型液晶連合、「官主導」に潜む限界

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東芝とソニーが、スマートフォンなどに使われる中小型液晶パネル事業の統合に動いていることが、明らかになった。年内にも新会社を設立、官民ファンドの産業革新機構が投資する形で、調整が進められているようだ。

両社を合わせた世界シェアは15%強。実現すれば現在世界トップのシャープをリードし、新たな首位連合が誕生することになる。新会社は増産資金確保を視野に1000億円超の増資を実施し、全額を機構が引き受けるとみられる。

一見すると、スマートフォンブームに乗り、攻めに出たかに見える統合案。が、両社に本気で中小型液晶でトップの座を取りに行く気概があるか、疑わしい。実際に両社にとって液晶事業は本丸でない。ソニーは京セラに一部ラインを譲渡するなど事業整理を遂行。自社製カメラやカーナビ向けなど、身の丈に合わせて生産を集約した。

一方の東芝の場合、自社でノートパソコンを手掛けているほか、米アップルが大口顧客であるため、一定程度の液晶を自社で生産する必要性がある。ただ、液晶子会社の東芝モバイルディスプレイの債務超過額は、2010年3月末時点で1000億円超。投資上の余力はなく、10年8月にはわずか160億円の有機ELの量産計画ですら、見送っている。12年4月稼働メドに石川県では新工場を建設中だが、1000億円超とされる投資額の大半を拠出しているのもアップルだ。

こうした中、降って湧いた今回の統合案。最大のミソは機構が絡んでいる点だ。機構からの出資は返済義務がなく、東芝とソニーにすれば、最小限のリスクでの増産投資ができるようになる。しかも今回の案では、機構が7~8割出資するとみられている。両社は業績が安定せず、巨額投資を必要とする液晶を連結事業から切り離すことも可能で、渡りに船ともいえる。

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