「家政婦は見た!」には皆が気づかないズレがある 『家政婦の歴史』濱口桂一郎氏に聞く

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『家政婦の歴史』著者の濱口桂一郎氏
[著者プロフィル]濱口桂一郎(はまぐち・けいいちろう)/労働政策研究・研修機構 労働政策研究所長。1958年生まれ。83年東京大学法学部卒、労働省入省。欧州連合日本政府代表部一等書記官などを経て2017年から現職。著書に『ジョブ型雇用社会とは何か』など。(撮影:梅谷秀司)
1人の女性の死をきっかけに家政婦100年の歴史をたどった。戦前のベンチャービジネスの躍動感あり、占領下で強いられた仮の姿が定着する不条理あり。史料を丹念に繰り、看板と実態のねじれを浮かび上がらせた。
家政婦の歴史 (文春新書 1414)
『家政婦の歴史 (文春新書 1414)』(濱口桂一郎 著/文春新書/1100円/256ページ)書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします。

──これまで「メンバーシップ型」「ジョブ型」と雇用システムを大きな枠組みで捉えてきた濱口さんが、ピンポイントで家政婦を取り上げるとは意外でした。

労働問題のメインストリームから見れば傍流のトピックかもしれません。でも自分としては、ジョブ型雇用について論じることと焦点の合わせ方が大きく違うとは思っていないんです。家政婦という存在は小さなものだけれど、その小さな穴からのぞき込んで見えてくる映像には広がりがあります。

──家政婦に着目したきっかけは。

2022年9月に下された家政婦の過労死をめぐる判決です。ある家庭に泊まり込んで7日間働いた後に亡くなったのは過労死だとの訴えを、東京地裁は退けました。「『家事使用人』だから、過労死認定の根拠となる労働基準法などの適用除外」という理由です。

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