高校全入時代、7割が通う高校「普通科」で見過ごされてきた課題とは 大学ギャップの原因、「主体的な学び」にも影響

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主体的な学びの姿勢を育むことが、現代の普通科の役割

余白を作り出しながら、普通科が越えなければならない壁がもう1つある。これは従来の普通科のあり方と定義にも起因する、根源的な課題のようだ。

「各校の魅力化と特色化を進めながら、一方で普通科の学びの共通性は確保していかなければなりません。差別化を図るために、まず『普通科で学んだすべての生徒が等しく身に付けるものとは何か』を示す必要があるわけです。普通科は生徒が多いことも特徴ですが、その中でも今日求められている『個別最適の学び』も実現していかなくてはならない。これらの課題を考えるとき、私たちは『そもそも普通科とは』という問いに立ち返る必要があると思いませんか」

高校の「総合的な探究の時間」は、佐藤氏が重視する高校の特色づくりにも、生徒の主体性の育成にも寄与する取り組みだ。

「安易な調べ学習ではなく、自ら課題を発見し解決する力を育む探究学習は積極的に取り組んでほしいと思います。地域と連携した活動を行う学校も多いですが、そうするとその土地ならではの特色も打ち出しやすくなります。地域や社会に果たすべき役割を校長先生がしっかり受け止めて、学校の教育課程に生かしている好例もたくさんあります」

偏差値で何となく普通科高校を選び、その先でも偏差値で何となく大学を選んできた大人は少なくないだろう。それはやがて、何となく仕事を選ぶことにもつながりかねない。だが高校で「学びの姿勢の転換」ができれば、この連鎖を断ち切ることができる。普通科は本来、多くの学びに接続する幅広い可能性を持ったものだったはずだ。

「高校に進むことが当たり前となった現在、普通科には『何のために入学したのか』が不明瞭な生徒がたくさんいるでしょう。今の普通科に求められている役割は、そうした生徒たちの学ぶ姿勢を変えることだと考えています」

中学までの受け身を脱して、高校生として主体的に学ぶとはどういうことか――生徒自身が考えて変わろうとする過程にこそ、課題発見のチャンスもあると佐藤氏は言う。主体的な学びの姿勢を身に付けようとすること自体が、問いを立て、自ら学ぶ力を伸ばすというサイクルを生むのかもしれない。

(文:鈴木絢子、注記のない写真:すとらいぷ / PIXTA)

東洋経済education × ICT編集部

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小学校・中学校・高校・大学等の学校教育に関するニュースや課題のほか連載などを通じて教育現場の今をわかりやすくお伝えします。

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