高校全入時代、7割が通う高校「普通科」で見過ごされてきた課題とは 大学ギャップの原因、「主体的な学び」にも影響

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こうしたことを防ぐためにも、普通科高校の特色を明確にすることが必要なのだと佐藤氏は言う。なぜ「高校の特色化」が、学びのギャップを抑えることにつながるのか。

「高校卒業後のことまで考えて学校を選ぶのは、多くの15歳にとっては難しい。偏差値で漫然と普通科に決めることが、高校での受け身の学習姿勢を作ってしまうのです。だからこそ、偏差値ではなくやりたいことで学校が選べるように、『この高校ではこんなことができる』という特徴を学校が示す必要があるでしょう。自ら主体的に選んだ学校でなら、生徒たちもより主体的に学ぶ姿勢に変化していくはずです」

※文部科学省「令和4年度学校基本統計(学校基本調査報告書)」より

「普通科信仰」「偏差値だけでの学校選び」から脱却を

普通科が抱える課題はほかにもある。変革に当たっての壁として、佐藤氏はまず「保護者世代の普通科信仰」を挙げた。

「保護者自身も偏差値で高校を選んできた人が多いので、『とりあえず普通科』という意識が根強くあります。1994年度に『総合学科』が生まれた背景には、そうした旧来の価値観と子どもたちのやりたいこととのズレを埋めるという狙いもありました。親世代も知らない未来が来る現代では、偏差値の高い高校から偏差値の高い大学に入ることが最重要課題ではありません。高校入試でも面接が導入されたり、大学入試も変革されたりしている中で、保護者の意識改革も求められていると思います」

もう1つの壁は、キャリア教育の難しさだ。ここには教員の激務という課題も絡んでくると佐藤氏は続ける。

「例えば『環境保護に関わる仕事をしたい』という目標があれば、生徒自身が『教科横断的な学び』の必要性に気づき、それによって学ぶ姿勢も主体的なものになるでしょう。キャリア教育が機能すればこうした効果も生まれるはずですが、文科省が推進するキャリアパスポートの取り組みには小中高の連携が欠かせないし、教員の意識と知識のアップデートも重要になってくる。多忙を極める現場で実現していくのはかなり困難です」

教員が学ぶ余裕のない学校では、キャリア教育に充てるべき時間が、単なる進路指導に消費されてしまうこともある。佐藤氏はすべての問題解決のために、「今の学校にはもっと余白が必要」だと話す。

「世間でも働き方改革が叫ばれていますが、先生方は今も、その流れに逆行するぐらい頑張っています。その努力はこれ以上ないほどのものだと思います。しかしそれでも学校には『余白』がない。休憩できる場所や休みの先生のフォローをする時間、想定外のことに対応する余力もなく、先生も子どもも追い詰められています。これでは学校の魅力化、特色化は進まないでしょう」

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