問われる存在意義「日本PTA全国協議会」、最上位団体の運営に不満と怒りの声 会員約750万人、子ども1人10円の会費が日Pに
「全国大会は、オンライン開催で十分なのではないか」
開催県や市からの補助金も合わせ、何千万円という運営資金により日Pの全国大会は開催されている。
「そもそもPTAは、子どもたちのたちのすこやかな成長を目的として活動するものです。『全国大会という“保護者が学ぶ機会”を提供することが子どもたちの成長につながる』という論理も理解できなくはないですが、開催のためにこれだけ高額の費用と手間をかけるのは、費用対効果としても非常に疑問を感じます」というのは、P連本部役員として全国大会運営に携わった経験のある梅原一浩氏だ。
「私が全国大会に関わった時期はコロナ禍で、まん延防止等重点措置期間、緊急事態宣言期間が繰り返されていました。子どもたちの学校行事が次々と中止や延期になりたくさんの制限が強いられる中、全国大会という名の下に他県から人を呼び込むことは好ましくないと考えた私は、大会の開催には反対し、開催にこだわるならばオンライン開催はどうかと提案しました。しかし、日P本部からは『行く側にも参加する権利がある』『対面開催がマスト』などの声が出て、実行委員会は紛糾しました」という。
最終的にこの年の全国大会は開催期間1日、対面とオンラインのハイブリッド形式で開催された。
「今後も全国大会を継続していくのなら、オンライン開催で十分ではないかと思います。PTAの活動は、多くの会員にその門戸を広げていくことが大切です。全国のPTA代表者だけが対面で集まるクローズドのスタイルは、運営側にとっても参加する側にとっても大きな負担です。オンライン開催にして、PTA会員なら誰もが参加できるスタイルに移行していくのが望ましいのではないでしょうか」
全国組織でしかできないことにリソースを集中できないか
繰り返しになるが、日Pは、小・中学校のPTAの全国組織だ。先の大森氏は言う。
「全国の会員がPTAの全国組織として日Pに期待するのは、給食の無償化、部活動地域移行に伴う予算追加、不登校、教員の働き方改革など教育予算の獲得と、これらに必要な法整備のために文部科学省に声を上げること。そしてその結果をフィードバックすること。これ以外にないのではないでしょうか。これまでの全国大会モデルを省力化・適正化し、全国組織でしかできないことにリソースを集中してほしいと思います」
コロナ禍を経て、社会環境や経済環境、人々のライフスタイルなどが大きく様変わりする中、各校のPTAでは、これまでの前例踏襲的、強制的な運営方法やあり方を見直し、省力化・適正化に向け進化を遂げていく機運が少しずつ高まってきている。
全国のPTAを束ねる日Pだからこそ、時代に即した運営を期待したいところであるが、2023年7月には金田淳前会長がハラスメントを理由に解職。この件をめぐり9月には、同日に金田淳前会長、前副会長で金田氏解職により新会長に就任した後藤豊郎新会長が記者会見し応酬するなど組織としてのほころびが目につく。
一連の流れを受け、東洋経済education×ICT編集部では2023年8月、日P宛に活動のビジョンや意義、全国大会の運営についての考え、ガバナンスのあり方、前会長解職の経緯などについて質問状を送り、メールによる回答を求めた。これに対し、日P後藤豊郎新会長が対面取材により回答する旨の返答を受け取った。
後編では、後藤豊郎新会長への取材記事をお届けする。
(注記のない写真:砂肝大好き / PIXTA)
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